研究課題
IgA腎症は、世界およびわが国で最も頻度が高い慢性腎炎で小児においても最多であり、慢性腎不全の主要な原因である。IgA1の遺伝学的素因によるヒンジ部の糖鎖異常とその異常IgA1を合む免疫複合体のメサンギウムへの沈着に起因する慢性炎症(糸球体硬化)と間質の線維化が基本的病態である。本研究の目的は、IgA腎症の複数の基本的病態生理におけるマイクロRNA (miRNA)の関与とその機序を解明し、それらを修飾するこどによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治械研究による効果の確認である。具体的方針は以下の通りである。IgA腎症の基本病態への関与が推測されるmiRNAの発現を腎生検検体と対照で比較し、増減をまず確認する。その後、それらのmiRNAが制御する標的分子を検索し、病態の解析を進める。推定される実例を以下に示す。(1) 糖鎖異常IgA1の産生(miR148b):糖化酵素C1Ga1T1が糖鎖異常IgA1の産生を制御しており、miRNAとの関与を検討する。特にC1Ga1T1の3'-UTRに存在する1365G>A多型(rs1047763)はmiR-148bによる遺伝子発現制御と密接に関与し、併せて解析する。(2) 異常IgAを含む免疫複合体のメサンギウムへの沈着(miR-133a miR133b miR-185):これらのm i RNA と接着分子の関係を検討する。(3) 慢性炎症(miR-17-5b):増殖、細胞内輸送などに関与する分子とこのmiRNAの関与を検討する。(4) 線維化(miR-29c miR-192 miR-200c):TGFβ、コラーゲン、Eカドへリン、上皮間葉移行(EMT)関連分子とこれらのmiRNAの関与を検討する。
3: やや遅れている
本研究は検体の収集に依存するところが大きく、その進捗が若干予想より遅れている。近年、miRNAの分野の進歩はめざましく、より多くの可能性を模索するために、当初予定した分子だけではなく、より広い範囲から検討を進める方針とし、マイクロアレイによる多数のmiRNAの検討を実施している。その結果からIgA腎症への関与が推定されるmiRNAを同定し、それらのmiRNAにより制御される分子も念頭におき、総合的に研究を展開する方針である。現在、マイクロアレイを完了し、本疾患への関与が推定される分子の抽出、さらにその制御を受ける分子の確認作業を進めている。それらの分子の中に、当初から検討を予定していたmiRNAが含まれていれば、それらとその関連分子の検討の意義は高まり、重点的に検討を進めていく。一方、当初予測していなかったmiRNAの関与が示されれば、本疾患の新たな病態の一面の同定に繋がる可能性があり、意義深い。現時点で、個々のmiRNAと関連分子の詳細な検討が実施できておらず、それが本評価とした一因である。
本研究は検体の収集に依存するところが大きく、その進捗が若干予想より遅れているので、この点を考慮する必要があるが、臨床的検体であり、人為的に操作することは困難である。近年、miRNAの分野の進歩はめざましく、より多くの可能性を模索するために、当初予定した分子だけではなく、より広い範囲から検討を進める方針とし、マイクロアレイによる多数のmiRNAの検討を実施している。その結果からIgA腎症への関与が推定されるmiRNAを同定し、それらのmiRNAにより制御される分子も念頭におき、総合的に研究を展開する方針である。現在、マイクロアレイを完了し、本疾患への関与が推定される分子の抽出、さらにその制御を受ける分子の確認作業を進めている。それらの分子の中に、当初から検討を予定していたmiRNAが含まれていれば、それらとその関連分子の検討の意義は高まり、重点的に検討を進めていく。一方、当初予測していなかったmiRNAの関与が示されれば、本疾患の新たな病態の一面の同定に繋がる可能性があり、意義深い。今後は、現時点で実施できていない個々のmiRNAと関連分子の詳細な検討を進めていく。先述の通り検体の収集の遅れがあり、マイクロアレイにおいても十分に検討できたと言えない。従って、追加でマイクロアレイを実施し、先の結果と合わせて検討することにより、確かなデータを得るように努める。ヒトの検体の収集が困難である場合、当初の予定と異なるが、動物実験や培養細胞による研究なども検討する。
本研究は検体収集に依存しており、その当初予測との差が、消耗品などの使用状況に影響した。本年度は、マイクロアレイを中心に実施し、個々のmiRNAの検討にあまり費用が発生していない。
マイクロアレイによる多数のmiRNAの検討を実施し、その結果からIgA腎症への関与が推定されるmiRNAを同定し、それらのmiRNAにより制御される分子も念頭におき、総合的に研究を展開する。今後は、現時点で十分実施できていない個々のmiRNAと関連分子の詳細な検討を進めていく。検体の収集の遅れがあり、マイクロアレイにおいても十分に検討できていない可能性がある。従って、追加でマイクロアレイを実施し、先の結果と合わせて検討することにより、確かなデータを得るように努める。ヒトの検体の収集が困難である場合、当初の予定と異なるが、動物実験や培養細胞による研究なども検討する。これらを進めるための試薬、費用に本研究費を使用する。さらに、国内外での発表、情報収集、研究打ち合わせ等の旅費に使用する。
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