研究実績の概要 |
我々は、ガンマグロブリン静注療法(IVIG)不応の重症川崎病(KD)にシクロスポリA(CsA)が有効であると報告(Pediatr Infect Dis J.2011)し、このデータに基いて2014年5月から多施設共同で、重症KDを対象に初期治療としてIVIG単独療法とIVIG+CsA併用療法の有用性を比較する医師主導治験を開始した。一方、CsAの効果発現の詳細なメカニズムは、今なお不明である。本研究は、重症KDにCsAを用いた初期治療前後における、①細胞内シグナル伝達物質、②各種サイトカイン(sIL-2R, IL-2,4,6,10,TNF等)、③サイトカイン遺伝子発現レベルの変化をIVIG単独治療群と比較検討し、CsAの作用機序を解明することが目的である。KD血管炎の発症、進展における細胞性免疫、液性免疫の関与する経路を解明し、IVIGやCsAの作用点をも明らかにし、重症KDの病態が解明できれば、治療法に新たな道が開け、重症KD治療のガイドライン作成にも多大な影響を及ぼし、CAL発症予防など、患者に多大の福音をもたらすと思われる。 本年度までに、本治験への患者登録が終了し、当院にて本治験に参加した患者数が13例となった。5例がIVIG単独療法群で、8例がIVIG+CsA群であった。現在、これらの患者の血液サンプルから血清分離を行い、また、RNA採取用試験管にて血液を凍結保存している。RNAの抽出、精製を行い、real time RT PCRによる細胞内シグナル伝達物質(STAT1,3,5, NFAT等)の遺伝子発現量の測定の準備を行っている。また、現在、IVIG有効群、無効群、IVIG+CsA併用療法有効群、無効群、計11例29ポイントで、炎症性サイトカイン(sIL-2R, IL2, 4, 6, 10, TNF等)の測定をすでに行い、経時的変化について解析中である。
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