研究実績の概要 |
川崎病の難治例(免疫グロプリン大量静注療法(IVIG)不応例)において、血小板活性化因子(PAF)活性化の関与が報告され、また、PAFの炎症反応経路上に存在する転写因子NF-AT(活性化T細胞核内因子)のリン酸化により、インターロイキン2(IL-2)が誘導され、T細胞やマクロファージが活性化されることが知られている。そこで、PAF活性化経路を抑制する目的で、NF-ATを阻害するシクロスポリン(CsA)3mg/kg/dayの持続静注を川崎病患者のうち、IVIG 2g/kgを2回以上投与されたIVIG不応例50例(男33例、女17例)に対して施行した。その結果、50例全てで解熱が得られ(解熱までの期間は24時間以内-7日)、うち37例(72%)が24時間以内と短期間で解熱した。解熱時のCsA血中濃度は220-570ng/mL (中央値373ng/mL)であった。川崎病の最重要後遺症である冠動脈瘤は、冠動脈拡大前にCsA療法を開始した49例に冠動脈瘤はなく、第10病日の入院時、CsA療法前、既に拡大を認めた症例に形成された右冠動脈中等瘤1例のみで、CsA療法は難治例の治療戦略として非常に良好であった。また、炎症性バイオマーカーのCsA投与前と静注3-5日後の比較では、T細胞活性化のマーカーである可溶性IL-2レセプターが2587 to 1638 U/mL, p < 0.01と有意に低下し、炎症マーカーのCRPも13.1 to 4.4 mg/dLと有意に低下した。白血球数に有意差はなかったが、リンパ球は3021→4720/μL, p < 0.01と有意に増加した。結論として、CsA静注療法は、NF-AT抑制によりPAFの炎症反応経路を速やかに抑制し、IVIG不応例に対する有効な治療法となる可能性が考えられた。
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