本研究の目的は、思春期寛解喘息児の気道閉塞状態とその可逆性、および気道炎症、特に神経原性炎症の状態を評価することである。このため、定期通院中の思春期喘息児を対象として、長期管理薬なしにて発作寛解状態にある児(寛解群)、および長期管理薬投与中で発作のコントロールされている児(治療継続群)の差異を検討した。可逆的な気道閉塞状態の評価には気管支拡張薬吸入前後の肺機能を比較する気道可逆性試験を用い、以下の4群の亜型に分類した。即ち、ⅰ)無変化型:PEF改善率20%未満及びV50 改善率20%未満、ⅱ)末梢気道閉塞改善型:PEF改善率20未満及びV50 改善率20%以上、ⅲ)中枢気道閉塞改善型:PEF改善率20%以上及びV50改善率20%未満、ⅳ)全般改善型:PEF改善率20%以上及びV50改善率20%以上、である。昨年の報告では、両群とも群全体では吸入前肺機能の%予測値は低下しているものの、吸入後改善し可逆的な閉塞と考えた。本年度、被験者数を増やし各亜型ごとに検討したところ、寛解群では、全般改善型の比率が治療継続群より有意に高く、この亜型では、吸入後の%予測値が無変化型に比べ有意に低値のままであった。このことは寛解と思われ無治療状態にある児の中には不可逆的気道閉塞の進行例が含まれることを示唆していた。気道炎症のうち、好酸球性気道炎症のマーカーである呼気NOは両群間で差がなく、亜型間でも差はなかった。神経原性炎症の評価についてはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)など、一部神経ペプチドの測定を開始したが、現在測定の方法論を確立中であり、統計的処理をするのは至らなかった。
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