研究課題/領域番号 |
15K09699
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大塚 宜一 順天堂大学, 医学部, 客員准教授 (90338335)
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研究分担者 |
清水 俊明 順天堂大学, 医学部, 教授 (30260889)
藤井 徹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30420855)
工藤 孝広 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90365601)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消化管アレルギー / 粘膜免疫 / マイクロアレイ / シグナル伝達分子 / H.pylori感染症 / クローン病 / 潰瘍性大腸炎 |
研究実績の概要 |
胎児期の腸管は無菌状態であることから、新生児期・乳児期から小児期にかけ、腸内細菌叢の変化にともない粘膜免疫機能にダイナミックな変化が起こっていることが予想される。生体は、消化機能、バリアー機能、さらに寛容誘導機能を成熟させることでそれらの変化に適応している。しかし、十分に適応出来ないことが新生児・乳児消化管アレルギー、食物過敏性腸症、H.pylori感染症、潰瘍性大腸炎、クローン病等の疾患発症の誘引となっている可能性がある。本研究では、それら小児期の消化器疾患および正常対照群の消化管粘膜を用い、それぞれの消化管粘膜免疫機構をmicroarray法、real-time PCR法、免疫組織染色などを行い解析し、その病態の解明に努めるとともに、新生児期からの粘膜免疫機構の発達過程を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、小児のHelicobacter pylori(H.pylori)感染性胃炎・胃潰瘍を中心に研究を進めた。H.pylori持続感染の多くは5歳以下で生じる。成人のH.pylori感染は発癌のリスクとなるが、小児期からの感染の関与については明らかではない。本研究では、H.pyloriに感染した小児と成人の胃粘膜上に発現する免疫・癌関連分子の発現を、microarrayを用いて比較検討した。 方法:当院小児科および消化器内科において、腹痛・悪心・嘔吐などの消化器症状に対して上部消化管内視鏡検査および胃粘膜組織生検を施行した患者を対象とした。H.pylori感染小児群、非感染小児群、感染成人群、非感染成人群、各々6症例、合計24症例の胃粘膜(前庭部・胃体部)を用い、microarrayにて免疫・癌関連分子の発現を網羅的に比較検討した。Microarray上、有意差を認めた分子の中から炎症や発癌、感染、粘膜萎縮に関する分子を選定し、real-time PCRを用いて定量的に評価した。また、それらの分子について免疫組織染色を行い、蛋白レベルでも評価した。 結果:小児、成人とも感染の有無によって免疫・癌関連分子に発現の変化が確認された。成人感染群でより強い発現のもの(OLFM4)、成人・小児感染群で同等に発現するもの(LCN2,REG3A,PIM2,CXCL13)、などを確認した。 考案:H.pylori感染における発癌の機序として、癌関連分子の発現の亢進及び慢性炎症性変化の関与が指摘されている。小児期の粘膜において、発癌抑制因子と考えられるOLFM4の弱発現、癌促進に働くとされるREG3A、PIM2、および慢性炎症性変化に関与するCXCL13などの強発現が確認された。これらの分子の発現の変化は、将来の癌化の危険因子と考えられ、小児期における除菌療法の必要性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
昨今、H.pylori感染とアレルギー疾患の関連が示唆されている。H.pyloriに感染しているとTh2細胞へのシグナルが抑制されアレルギーの予防につながる一方、除菌後にアレルギーを発症するリスクが高まるというものである。今後は、Th1, Th2, Th17, Treg細胞に関連するシグナル分子の発現を中心に更なる検討を進める予定である。 また、小児期発症の新生児・乳児消化管アレルギー、食物過敏性腸症、潰瘍性大腸炎、クローン病等の他疾患を対象とし、更なる検討を続けて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際学会での発表がスケジュールの都合で不参加となったこと、研究助手の退職に伴い人件費に関する出費が無くなったこと、また、各消化器疾患マウスモデルの作成に時間がかかり、動物実験を次年度に持ち越すこととしたため、それに関わる経費を次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、カナダでの国際学会の口演が既に決まっている。また、新しく研究助手を雇用しており、その人件費が必要となっている。さらに、消化器アレルギーマウスモデルの作成に成功しており、その動物実験に関する経費なども計上する予定である。
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