研究課題
消化管における粘膜免疫は、消化機能、バリアー機能(粘膜上皮細胞)、免疫機能が3本の柱となって営まれている。消化機能が未熟であれば抗原性のある蛋白質を消化できず、免疫反応が誘導される。一方、消化されなかった蛋白質およびペプチドは粘膜上皮細胞が有するバリアー機能により管腔内に排除される。それでも体内に侵入したペプチドに関しては、免疫寛容が誘導され生体の恒常性を維持している。一方、腸内細菌叢や遺伝的素因がその営みを修飾し、より寛容を誘導しやすい環境を提供する場合もあれば、消化管アレルギー、新生児壊死性腸炎、炎症性腸疾患(IBD)などの疾患を誘発させている可能性も指摘されている。特に新生児・乳児期は消化機能やバリアー機能が未熟であり、過剰な免疫応答が誘導されやすい状態である可能性があるが、その詳細は不明な点が多い。特に胎内は無菌状態であることから、新生児、乳児期、幼児期、学童期と、消化機能、バリアー機能、腸内細菌叢の変化などにともない、粘膜免疫機能はダイナミックな変化を生じていると考えられる。そこで、リンパ濾胞過形成、消化管アレルギー、食物過敏性腸症、好酸球性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、萎縮性胃炎、H.pylori感染症等の小児期消化器疾患および正常対照群を対象とし、新生児期から乳幼児期および学童期にかけての消化管粘膜免疫機構をmicroarray法, real-time PCR法, 免疫組織染色などを用い解析し、各種疾患の病態を解明するとともに、新生児期から小児期にかけての消化管粘膜免疫機構の発達過程を解析した。その結果、新生児期から乳児期にかけ、より未熟な粘膜において好酸球遊走因子であるeotaxinや粘膜局所でIgA産生をつかさどるリンパ濾胞形成因子であるCXCL13などの発現亢進が確認された。これらの分子は、局所の粘膜防御や経口免疫寛容に関わっており、小児期の消化管疾患の特徴を形成していることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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