研究実績の概要 |
近年、小児肥満が高頻度で出現しており、生活習慣病の温床となる。さらに小児の非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD; non-alcoholic fatty liver disease)およびそのひとつである非アルコール性脂肪肝炎(NASH; nonalcoholic steatohepatitis)の報告もある。成人NASHに対しては、ビタミンEの抗酸化療法が報告されている。我々は、小児NAFLDの臨床像を明らかにし、基礎的研究ではNAFLD治療のビタミンE作用メカニズムを検討してきた(J Clin Biochem Nutr, 2014)。そこで今回、NASHの治療過程において、新しい酸化ストレスマーカーの有用性および抗酸化剤の作用メカニズムについても検討する。NASHの治療法として、ビタミンEが有用である。そこで我々は生体においてビタミンE濃度を調節する因子を検討した。動物実験の結果では、ステロイド前駆体であるDHEA(dehydroepiandrosterone)が、抗酸化作用を有し、ビタミンE濃度を調節することを見いだした (J Clin Biochem Nutr, 2016)。またDHEAのビタミンE濃度調節には、ビタミンE輸送たんぱく質の発現が関与していた。以上からステロイドホルモンおよび脂溶性ビタミンの新しい相互作用を認め、抗酸化作用に関与していることが考えられた。血液中ビタミンE結合タンパク質であるAfamin(アルブミンと同ファミリー、87kDa)は、NAFLDモデルにおいて有意に低下していた。Afaminは、NAFLDにおけるビタミンE療法の新たな指標となり得るかもしれない。これを実証するにはさらなる研究が必要と思われる。
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