今後の研究の推進方策 |
本疾患の病因を明らかにするためには、遺伝子や転写産物の網羅的解析のデータを行い、これまで知られていなかった未知の病因に迫るアプローチが不可欠である。近年、DNA, RNAを劣化させない固定液PaxGeneが発売され、様々な保存組織から損傷の少ない良質のDNA, RNAが抽出でき、ホルマリン固定保存組織から次世代シークエンサーを用いたDNA, RNAの網羅的解析を行うことが可能となった。そこで、本疾患のDNA, RNAの網羅的解析を含む新たな研究計画を国立循環器病研究センター倫理委員会に提出し、承諾された(M25-097-2)。新たに発症し、僧帽弁置換術を余儀なくされた症例において、患者代諾者から同意書を得た上で得られた組織をPaxGeneで固定し、DNA, RNAを回収して、大阪大学附属微生物病研究所感染症メタゲノム解析研究分野教室においてウイルスゲノムの解析を行っている。また同様に本疾患患者の過去のホルマリン固定パラフィン切片(FFPE)からRNA, DNAを回収して、ウイルスゲノムの検索およびRNAトランスクリプトーム解析を行う。また、本疾患に抗SSA抗体やウイルスがどのように関与しているのか、DNAの網羅的解析により本疾患に関与するウイルスが見つかる可能性がある。そうすれば、本疾患予防のための抗体やワクチンの作成にもつながる。またRNAトランスクリプトーム解析により、SSA抗体陽性患者でどのような炎症シグナルカスケードが亢進しているかを明らかにできれば、腱索断裂にいたる分子細胞生物学的なメカニズムを明らかにすることができ、今後、治療法の開発につなげる可能性が出てくる。
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