研究課題/領域番号 |
15K09706
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 真理子 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (20732928)
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研究分担者 |
田中 祐吉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), その他部局等, 臨床研究所長 (50420691)
藤代 準 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60528438)
岩中 督 東京大学, 医学部附属病院, 名誉教授 (90193755)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胎便関連腸閉塞 / カハール介在細胞 / 新生児 / 胎児 |
研究実績の概要 |
本研究では、胎児・新生児の病理解剖検体の腸管においてカハール介在細胞を中心とした腸管蠕動運動に関連する細胞の発達過程を明らかにすることにより、胎便関連腸閉塞発症メカニズムの解明を試みる。当該年度においては、胎児期の胎齢ごとのカハール介在細胞の形態学的特徴を、免疫組織化学染色を用いて解析した。 在胎10週台の胎児、20週台の胎児、30週台の胎児、新生児(在胎37週以降、生後28日以内)、の4群各5例、計20例を対象とし、回腸組織においてHE染色、抗C-Kit抗体、抗AA-1抗体、抗Nestin抗体を用いた免疫組織化学染色を施行し、カハール介在細胞の同定、各染色の発現量の比較を試みた。なお、抗C-Kit抗体はカハール介在細胞と肥満細胞、抗AA-1抗体は肥満細胞、抗Nestin抗体はカハール介在細胞で陽性となることが知られている。HE染色では深部筋神経叢内、筋層間ともにカハール介在細胞の同定はできなかった。抗C-Kit抗体染色では、いずれの群においても、筋層間神経叢内の神経節細胞周囲に陽性細胞を認め、筋層間カハール介在細胞(ICC-MP)であると判断した。一方、内輪筋の深部筋神経叢内には陽性細胞を認めなかった。抗AA-1抗体が陽性となる肥満細胞は、筋層間あるいは深部筋神経叢内には認めなかった。したがって、抗C-Kit抗体を用いて筋層間・深部筋神経叢内のカハール介在細胞を同定する際に、肥満細胞を考慮する必要はないと考えられた。Nestin抗体染色においては、すべての群でICC-MPと考えられる細胞に陽性像を認めたが、ICC-DMPに相当する陽性細胞は確認できなかった。 これにより得られた結果は、胎便関連性腸閉塞の発症メカニズム解明のための研究において、対照データとして用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Nestinについては、中枢神経領域で知られているように、成熟度の評価に使用できる可能性を考えたが、今回の結果からは在胎週数による差は明らかでなかった。 一方、ICC-DMPは文献上在胎38週頃に発現するとされているが、正期産の新生児においてもICC-DMPおよび深部筋神経叢の存在を確認できなかった。ヒト回腸にICC-DMPが存在しない、新生児期までは発現がなくそれ以降に発現する、ICC-DMPは存在するがC-Kit, Nestinの発現がない、のいずれを意味するのかは不明であった。 上記の点で、予想に反する結果を得たため、在胎週数によるICCの成熟度を評価するには到らず、進捗状況はやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き胎児・新生児において、また乳幼児期の検体も追加して、ICCの形態的、免疫組織学的検索を行い、正常腸管におけるICCの成熟につき検討を進め、以降の検討における対照データとする。 さらに、胎便関連腸閉塞に対する腸管切除例における手術標本についても同様の検討を行い、胎便関連腸閉塞の発症メカニズムの解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Nestin, ICC-DMP及び深部筋神経叢の評価に関連する研究計画の遅延に伴い、物品費、人件費、その他(発表等)にかかる経費が予想より減少したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度研究計画において遅延した項目の解析を進めると共に、平成28年度研究計画に従って研究を遂行し、国内外の学術集会で情報収集・意見交換、成果発表を行うことに、次年度使用額を含めた研究経費を利用する。
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