研究課題/領域番号 |
15K09709
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小杉 伊三夫 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (10252173)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サイトメガロウイルス / 母子感染 / 胎盤 |
研究実績の概要 |
本年度はHCMV感染ヒト胎盤標本を用いた解析を行った。 1) HCMV感染胎盤パラフィンブロックから作製した連続切片においてウイルス抗原及び各種細胞マーカーと共に、Desmin及びこれ以外の形質転換関連因子の検出を試みる。ウイルス抗原は抗HCMV-IE1抗体、細胞マーカーは、血管内皮細胞を抗CD31、血管内皮・周囲細胞を抗CD146、血管周囲細胞を抗NG、血管周囲・間質細胞を抗PDGFR-β、血管周囲・間質細胞を抗平滑筋アクチン(抗α-SMA)と抗Desmin、血管平滑筋細胞を抗Caldesmon、マクロファージを抗Iba-1で検出した。その結果、血管周囲細胞の形質転換に加え、絨毛間質のマクロファージ反応が重要であることが明らかとなった。
2) 初産婦の血中抗HCMV抗体保有率が低下しているとはいえ,少なくとも60%の妊婦はHCMV既感染(潜伏感染)で妊娠中に何らかの誘因によってウイルスの再活性化を生ずる危険性がある.従って,HCMV母子感染の実体をより明らかにする為には,まず,何らかの異常が指摘された胎盤においてHCMV感染の状態を探索することが重要と考えられる.今回,妊娠中HCMV抗体未検査で緊急帝王切開術を施行された娩出胎盤標本において,偶然に胎盤母体側脱落膜に限局してHCMV抗原が検出された症例を経験し、ウイルス学的な解析を行った。その結果、分娩後ではあるが抗HCMV-IgG抗体Avidityは高値であったことから、妊婦はHCMV既感染で、脱落膜毛細血管内皮細胞の感染は妊娠中のHCMV再活性化もしくは再感染によると考えられた。これらの胎盤で潜伏感染に関連したHCMV蛋白の発現や胎盤・胎児機能への影響について検討した報告は無く、今後の研究課題と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AAVヘルパーフリーシステムを用いたDesminPro-Luc-AAVベクターの作製を行っているが、ベクターの構築に時間と手間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の方針 1) ヒト胎盤の解析の総括:血管周囲細胞におけるデスミン発現と形質転換との関係やこれと連動する絨毛でのマクロファージを主体とする病的変化についてまとめる。
2) AAVベクターシステムの構築:コンストラクト作製を早急に完成し、有用性のあるベクターシステムを作り上げる。
3) 妊娠マウスマウス胎盤感染モデル:母側細胞と仔側細胞の識別を可能にした新たな実験系を構築し、MCMV感染時の免疫系の動態について解析する。
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