研究課題/領域番号 |
15K09710
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
丸尾 良浩 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80314160)
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研究分担者 |
藤原 亮一 北里大学, 薬学部, 講師 (40631643)
松井 克之 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (60595924)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 母乳性黄疸 / 新生児高ビリルビン血症 / 核黄疸 / ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素 / UGT1A1 |
研究実績の概要 |
(1)ヒト化UGT1A1トランスジェニックマウスの作成:カリフォルニア大学サンディエゴ校、Robert Tukey教授との共同研究より3種類のヒトのビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)をもつトランスジェニックマウスを作成できた。肝臓のみにヒトUGT1A1を発現する野生型(Alb UGT1A1wt/Ugt1-/-)と母乳性黄疸の原因であるp.G71R変異(UGT1A1*6)をもつ変異型のマウス(Alb UGT1A1△71/Ugt1-/-)の作成を確認できた。また小腸のみにヒトUGT1A1を発現する野生型(Villin UGT1A1wt/Ugt1-/-)の作成を確認できた。Alb UGT1A1△71/Ugt1-/-においてはヒトのGilbert症候群のモデルになることを確認できた(未発表)。 (2)母乳性黄疸を起こすUGT1A1の変異の検索:成熟児、早産低出生体重児ともにUGT1A1*6が原因であることを明らかにした(Maruo Y, et al, J Pediatr 2016, Yanagi T et al. J Pediatr 2017)。 (3)安全な母乳栄養に関連する遷延性黄疸(母乳性黄疸)の管理法の提言:早産低出生体重児において、成熟時と同じくUGT1A1*6(p.G71R)が母乳栄養に関連する遷延性黄疸の危険因子であることを証明した(Yagagi T, Maruo Y, et al. J Pediatr 2017)。核黄疸のリスクの高い早産低出生体重児においてもUGT1A1*6が黄疸増悪の危険因子であることを証明できたことをもとに、低出生体重児の黄疸管理の指標を作ることにより、核黄疸の発症を予防できることが考えられ、2017年開始の難治性疾患実用化事業(AMED)奥村班「早産児核黄疸の包括的診療ガイドラインの作成」(課題ID 17824886)において、得られたデータをもとに研究を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ヒト化UGT1A1トランスジェニックマウスの作成:肝臓のみにヒトUGT1A1を発現する野生型トランスジェニックマウス(Alb UGT1A1wt/Ugt1-/-)と母乳性黄疸の原因であるp.G71R変異をもつ変異型のトランスジェニックマウス(Alb UGT1A1△71/Ugt1-/-)の作成を確認できた。また小腸のみにヒトUGT1A1を発現する野生型トランスジェニックマウス(Villin UGT1A1wt/Ugt1-/-)の作成を確認できた。しかし、小腸においてヒトUGT1A1*6を発現するトランスジェニックは作成できなかった。Villinプロモーターは大きくトランスジーンがマウスの卵細胞のゲノムに挿入しにくいことに起因すると考えられた。しかし、UGT1A1の発現の主たる場所は肝臓であり、Alb UGT1A1wt/Ugt1-/-とAlb UGT1A1△71/Ugt1-/- が得られ今後の研究を行うためには十分であり、当初の計画通りに進展していると考える。 (2)母乳性黄疸を起こすUGT1A1の変異の検索:日本人の成熟児および早産低出生体重児についてUGT1A1*6が母乳性黄疸の原因として同定でき、当初の計画通りに進展していると考える。 (3)早産低出生体重児においても成熟児と同じく新生児期の遷延性黄疸の乳児側の原因であることを明らかにできたこと、そしてこれまでのデータをもとにAMED「早産児核黄疸の包括的診療ガイドラインの作成」の研究に取りかかれたことは、当初の計画通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ヒト化UGT1A1トランスジェニックマウスの作成:今回、カリフォルニア大学サンディエゴ校、Robert Tukey教授との共同研究より作成できたAlb UGT1A1wt/Ugt1-/-、Alb UGT1A1△71/Ugt1-/-およびVillin UGT1A1wt/Ugt1-/-のトランスジェニックマウスを用い、新生児期の黄疸がどのように神経の発達に影響を及ぼすかの研究を行う。この研究はTukey教授のもとにある他の新生児黄疸モデルのトランスジェニックマウスTG(UGT1A1*1)Ugt-/-およびを加えて共同研究を続ける。この研究には大学共同利用機関法人・自然科学研究機構生理学研究所、鍋倉淳一教授ならびに滋賀医科大学神経難病研究センター創薬研究部門、森雅樹准教授とも共同研究をおこなう。この研究については科学研究費、基盤研究(C)「新生児高ビリルビン血症の脳神経の発達にお及ぼす効果についての研究」(平成30年~32年:研究代表者 丸尾良浩、18K07818)として現在遂行中である。 (2)母乳性黄疸を起こすUGT1A1の変異の検索:今回の研究をさらに発展させるにあたり、次は超早産児における核黄疸の発生とUGT1A1の多型が原因および危険因子であるかの解析を進める。 (3)安全な母乳栄養に関連する遷延性黄疸(母乳性黄疸)の管理法の提言:今回の研究結果をもとに、日本においては近年超早産児の核黄疸による脳性麻痺が増えており、UGT1A1の多型が危険因子であることをふまえ、超早産児の核黄疸の危険因子の早期算定と予防法の核黄疸の発症を予防するための方策を作る。この研究はすでに2017年開始の難治性疾患実用化事業(AMED)奥村班「早産児核黄疸の包括的診療ガイドラインの作成」(課題ID 17824886)として取り組んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者のRobert H Tukey (UCSD)とカナダで開催される米国小児科学会で研究成果の検討とこれからの研究経過の打ち合わせのための出張が必要なため。
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