本研究は、化学物質の発生毒性試験におけるゼブラフィッシュの有用性を検討することを目的に実施された。平成29年度は主にゼブラフィッシュで骨格形成異常を迅速に検出するための新たな骨染色法の開発と多重染色への応用、およびこの骨染色法で作製された透明度の高い標本を用いた画像取得法の検討を行った。ゼブラフィッシュを麻酔後、界面活性剤とKOHを含む透明化固定液に約16~72時間浸漬し、Alizarin red Sを含む染色液に15-60分浸漬した後、界面活性剤を含む洗浄液で余剰染色を除去した。骨染色標本はグリセロールに浸漬し、実体顕微鏡で観察・画像取得を行い、さらに蛍光ズーム顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡によるZ-stack撮像を行って三次元像描出を試みた。また、骨染色標本でHoechstによる蛍光核染色を行い、Alizarin red Sの蛍光との多重観察を行った。その結果、これまでよりも短時間で、透明度が高く、損傷がほとんどない骨格標本を作成することが可能な、新しい骨染色法が確立された。本法で作製した標本は軟部組織がほぼ完全に透明化しており、厚い軟部組織に覆われた骨(椎骨など)であっても高倍像を明瞭に描出することが可能であった。透明化処理後も組織構築は保たれており、核との二重染色や組織学的解析への利用も可能であった。また、骨染色に先立ってAlcian blueで軟骨染色を行うことで、骨と軟骨の二重染色も可能であった。 本法は鱗の除去以外は溶液の交換と温度管理のみの手順で行うことができるため、従来法より短時間でゼブラフィッシュ成魚の骨染色を行うことが可能になり、化学物質の発生毒性試験におけるゼブラフィッシュの利便性を向上されることに貢献した。また、本法は毒性試験等でスクリーニングとして多個体を解析する際に有用な骨染色の自動化の開発につながることが期待される。
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