研究課題
本研究は、母児相互作用の客観的指標を確立し、母児間の愛着形成メカニズムを解明するために、非侵襲的に組織の酸素代謝・血液循環の変化測定が可能な近赤外分光法(Near-Infrared Spectroscopy:NIRS)による2チャンネルの携帯型近赤外光組織酸素モニタ装置を用いて、母児同時に前頭前皮質の血液循環を「母児分離」「ケアリング」「授乳」の3つの場面で測定を行った。対象は、妊娠分娩歴に異常なく出産した母親とその児であり、その児も異常が認められていない21組の母児であった。測定は、プライバシー・安全が保たれる外来個室、あるいは大学内個室で実施した。携帯型NIRS装置のプローブを児および母親の左右前額部に設置し、同時測定を行った。育児行動に関しては、一般的な実験研究のように条件の統制はできないため、授乳に関しても児の欲求に従い、母親は通常の授乳方法で授乳を行った。途中で、激しい啼泣等あれば、直ちに中止し対応した。抱っこや授乳開始・終了などのイベントはNIRSシステム上で全てマーキングを行った。母の平均年齢は32.6±4.8歳、初産婦が52.4%であった。児は男児が61.9%、平均出生体重3043±443g、検査時月齢が1~2か月が65.4%で平均2.3±1.4か月で測定時間は平均20分(9~45分)であった。母児の酸素化ヘモグロビンについて、児に対して母のデータ時間を移動して相関を検討(交差相関)し、絶対値が最大となるタイムラグを検討した結果、ヒストグラムにおいて、パラメトリックな分布を示し、0~0.3の間に最大の分布を示した。また、状態別の交差相関ランクを検討した結果、ケアリング中に対して授乳中の方がより母児の相関を示す傾向がみられた。データはサンプル間隔60Hzで測定しており、ノイズも多いため、様々な方法でドリフト除去を試み、現在も解析を継続している。
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