研究課題/領域番号 |
15K09716
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
津田 雅之 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (90406182)
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研究分担者 |
都留 英美 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (70380318)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臍帯血 / エクソソーム / 脳性麻痺 |
研究実績の概要 |
脳性麻痺に対する新規治療法として、本学医学部附属病院において、日本初の脳性麻痺治療に向けた臍帯血幹細胞移植治療を開始した。有効性は認められているものの、作用メカニズムはまだ不明な点が多い。そこでわれわれは、臍帯血由来単核細胞から分泌されるエクソソームに着目し、そのエクソソームに脳障害を改善する効果があるかどうかを確かめることにした。 ヒト臍帯血由来単核細胞をエクソソーム不含の血清入培地で48時間培養し、その培養上清からエクソソーム画分を回収した。回収したエクソソームは、western blot法によるマーカー(CD9, CD63, CD81など)発現、電子顕微鏡による観察により確認した。単離したエクソソームによる神経保護作用の評価には、脳虚血のin vitroモデルを用いた。低酸素低グルコース負荷(OGD)した神経芽種細胞株SH-SY5Yに、単離したエクソソームを添加した後、TUNEL染色やPI染色などにより、細胞障害、細胞死を観察した。 エクソソーム画分の回収においては、ヒト臍帯血由来単核細胞の培養液からだけではなく、脳の障害部位に由来する刺激を単核細胞に与え、その培養液からもエクソソーム画分を回収した。具体的には、われわれの作製した脳性麻痺モデルマウスから脳を採取し、脳抽出物を培養液に添加した(培養液の1/10量)。正常マウスの脳抽出物添加や無添加群を対象とし、神経保護作用について比較した。脳性麻痺モデルへの臍帯血移植はモデル作製後3日目であることから、3日目の脳抽出物を用いた。対象群と比較して、細胞死を抑制する傾向はみられたが、有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト臍帯血由来単核細胞から回収したエクソソーム画分の神経保護作用をin vitroで評価した。今年度は臍帯血由来単核細胞への脳障害部位に由来する刺激を行い、刺激による効果を確かめた。計画していた神経細胞への分化誘導作用や刺激のタイミング(脳障害後、脳を採取するまでの時間)の検討まで実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
神経芽種細胞株SH-SY5Yを用いた脳虚血のin vitroモデル評価系を用い、神経保護作用、神経細胞への分化誘導作用について、刺激の有無やタイミングについてさらに検討する。われわれは、脳性麻痺モデルマウスへヒト臍帯血由来単核細胞を移植することによって、内在性の神経幹細胞が賦活化するデータを得ている。このことから、神経幹細胞を用いたin vitro評価モデルを作製し、神経幹細胞の増殖、分化、遊走などについても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳虚血のin vitroモデル評価系として神経芽種細胞株SH-SY5Yを用いた方法に加え、マウス脳室下帯から単離した神経幹細胞についても計画していたが、SH-SY5Yを用いた検討までしか実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス脳室下帯から神経幹細胞の単離のための試薬、培養液などの購入費とする。
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