研究実績の概要 |
脳性麻痺に対する新規治療法として、本学医学部附属病院において、日本初の脳性麻痺治療に向けた臍帯血幹細胞移植治療を開始した。有効性は認められているものの、作用メカニズムはまだ不明な点が多い。そこでわれわれは、臍帯血由来単核細胞から分泌されるエクソソームに着目し、そのエクソソームに脳障害を改善する効果があるかどうかを確かめることにした。 ヒト臍帯血由来単核細胞をエクソソーム不含の血清入培地で48時間培養し、その培養上清からエクソソーム画分を回収した。さらに、脳の障害部位に由来する刺激を与えた単核細胞の培養上清からもエクソソーム画分を回収し、効果を比較することにした。回収したエクソソームは、western blot法によるマーカー(CD9, CD63, CD81など)発現、電子顕微鏡による観察により確認した。刺激は、脳性麻痺モデルマウスを作製後、1日、3日、1週間、3週間で脳障害部位から調整した組織抽出液を単核細胞の培養液に加えることによって行った。回収したこれらのエクソソームを低酸素低グルコース負荷(OGD)した神経芽種細胞株SH-SY5Yに添加後、TUNEL染色やPI染色などにより、細胞障害や細胞死を観察した。その結果、刺激を与えた群は刺激を与えなかった対照群に比べて、細胞死が抑えられた。また、脳障害後1日と3日目からの脳組織抽出液で刺激した単核細胞から得られたエクソソームで抑制効果が高かった。
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