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2016 年度 実施状況報告書

超低出生体重児の虚血性脳障害に関する新規モデルマウスを用いた病態および治療的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K09723
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

出口 貴美子  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (50227542)

研究分担者 久保 健一郎  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20348791)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード虚血性脳障害 / 神経細胞移動 / モデルマウス / 発達障害 / 治療法開発
研究実績の概要

これまでの解析において、作成したモデルマウスでは、神経細胞移動の遅れの結果としてもたらされる、脳の組織構築の微細な変化が生じることが明らかになっている。本年度は、この作成したモデルマウスについて、脳の詳細な組織学的な解析や行動学的解析を行ったのち、DREDD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)システムを用いた脳の部位特異的活性化を行い、その際の行動学的解析を行った。
まず、昨年度に解析に着手した、神経回路網における変化について、例数を重ねて定量的な解析を行った。その結果、虚血性脳障害によって、神経細胞配置だけでなく、その配置が変化した神経細胞間で形成される神経回路網形成についても変化が起こることが明らかになった。
さらに、本年度は、子宮内エレクトロポレーション法を用いる際に、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質のみならず、人工受容体を発現するプラスミドを神経細胞に導入して、生後にクロザピンNオキサイド(CNO)を投与して、人工受容体を発現する神経細胞に特異的な神経活動活性化を行った。モデルマウスの行動解析において、昨年度にY字迷路試験において正常対照マウスと比較した際に有意な低下をみとめ、作業記憶の障害が示唆されたため、人為的に神経細胞の活動を変化させることによって低下した作業記憶が改善するかどうかの検証を行った。その結果、Y字迷路試験を行うモデルマウスの前頭前皮質の活性化を行うことによって、低下した作業記憶が有意に改善することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

子宮内電気穿孔による遺伝子導入法と人工受容体を用いた活性化方法を組み合わせる新たな技術の開発を行い、この技術を利用して虚血性脳障害を経験したマウスの前頭前皮質に人工受容体を発現させ、人為的に神経細胞の活動を変化させることに成功した。またその結果、当初は期待していなかった、低下した作業記憶の有意に改善が明らかになった。

今後の研究の推進方策

超早産児の後遺症として、認知機能障害が注目されており、認知機能の評価に焦点を当てて解析を行ったところ、Y字迷路試験において有意な低下を認めたが、子宮内エレクトロポレーション法を用いた人工受容体の遺伝子導入等、新規の実験系を導入して前頭前皮質の活性化を行ったところ、低下した作業記憶の有意に改善が明らかになったため、その際の電気生理学的解析を行い、低下した作業記憶の有意に改善したメカニズムの解析を行っていく。また、作業記憶以外の行動解析も進める。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、結紮時間や方法、手術方法を改良することで、母マウスの死亡率が減少し、安定的に仔マウスを得て解析を行うことが可能になった。このため、当初の予定よりも使用した動物数が減少したほか、購入を予定していた動物に代えて、一部は研究室内で繁殖した動物を用いたため、実験動物にかかる費用がさらに減少した。また、効率的な消耗品の購入と使用により、物品費が減少した。

次年度使用額の使用計画

物品費として、実験用動物400,000円、その他として、論文投稿費用等300,000円を計上する。結紮時間や方法、手術方法を改良することで、母マウスの死亡率が減少し、仔マウスを安定的に得て解析を行うことが可能になったため、これまでに得られた知見を踏まえつつ、虚血性脳障害による影響の解明を進めていくほか、成果発表を進めていく予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Baylor College of Medicine(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Baylor College of Medicine
  • [雑誌論文] Association of impaired neuronal migration with cognitive deficits in extremely preterm infants2017

    • 著者名/発表者名
      K. Kubo, K. Deguchi, T. Nagai, Y. Ito, K. Yoshida, T. Endo, S. Benner, W.Shan, A.o Kitazawa, M. Aramaki, K. Ishii, M. Shin, Y. Matsunaga, K. Hayashi, M. Kakeyama, C. Tohyama, K. F. Tanaka, K. Tanaka, S. Takashima, M. Nakayama, M. Itoh, Y. Hirata, B. Antalffy, D. D. Armstrong, K.Yamada, K. Inoue, and K. Nakajima
    • 雑誌名

      JCI Insight

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      -

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ApoER2 controls not only neuronal migration in the intermediate zone, but also termination of migration in the developing cerebral cortex.2017

    • 著者名/発表者名
      Yuki Hirota, Ken-ichiro Kubo, Takahiro Fujino, Tokuo T. Yamamoto, and Kazunori Nakajima
    • 雑誌名

      Cereb. Cortex

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      -

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Excessive activation of AhR signaling disrupts neuronal migration in the hippocampal CA1 region in the developing mouse.2017

    • 著者名/発表者名
      Eiki Kimura, Ken-ichiro Kubo, Toshihiro Endo, Kazunori Nakajima, Masaki Kakeyama, and Chiharu Tohyama
    • 雑誌名

      J. Toxicol. Sci.

      巻: 42 ページ: 25-30

    • DOI

      10.2131/jts.42.25.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Reelin transiently promotes N-cadherin-dependent neuronal adhesion during mouse cortical development.2017

    • 著者名/発表者名
      Yuki Matsunaga, Mariko Noda, Hideki Murakawa, Kanehiro Hayashi, Arata Nagasaka, Seika Inoue, Takaki Miyata, Takashi Miura, Ken-ichiro Kubo, and Kazunori Nakajima.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.

      巻: 114 ページ: 2048-2053

    • DOI

      10.1073/pnas.1615215114.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Reelin and neuropsychiatric disorders.2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Ishii, Ken-ichiro Kubo, and Kazunori Nakajima
    • 雑誌名

      Front. Cell. Neurosci.

      巻: 10 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fncel.2016.00229

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 超早産児脳障害のモデルマウス脳における組織構築の解析2017

    • 著者名/発表者名
      久保健一郎、出口貴美子、北澤彩子、石井一裕、シン ミンギョン、高嶋幸男、中山雅弘、伊藤雅之、井上健、仲嶋一範
    • 学会等名
      第122回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      長崎大学坂本キャンパス、長崎市(長崎県)
    • 年月日
      2017-03-28 – 2017-03-30
  • [学会発表] Why does cognitive impairment frequently develop later in extremely preterm infants2016

    • 著者名/発表者名
      Ken-ichiro Kubo, Kimiko Deguchi, Taku Nagai, Wei Shan, Ayako Kitazawa, Michihiko Aramaki, Kazuhiro Ishii, Shin Minkyung, Sachio Takashima, Masahiro Nakayama, Masayuki Itoh, Barbara Antalffy, Dawna D. Armstrong, Kiyofumi Yamada, Ken Inoue, and Kazunori Nakajima
    • 学会等名
      Cell Symposia: Big Questions in Neuroscience
    • 発表場所
      Paradise Point Resort & Spa,San Diego, California, U.S.A.
    • 年月日
      2016-11-10 – 2016-11-11
    • 国際学会
  • [学会発表] 環境要因としての虚血ストレスが大脳皮質の発達に与える影響2016

    • 著者名/発表者名
      久保健一郎、出口貴美子、井澤栄一、井上健、仲嶋一範
    • 学会等名
      フォーラム2016:衛生薬学・環境トキシコロジー
    • 発表場所
      昭和大学旗の台キャンパス、品川区(東京都)
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-11
    • 招待講演
  • [学会発表] Reelin coupled with myelin may play a role in long term maintenance of myelin2016

    • 著者名/発表者名
      Kimiko Deguchi,Takao Honda, Ken-ichiro Kubo, Kazunori Nakajima,and Ken Inoue
    • 学会等名
      第58回日本小児神経学会学術集会
    • 発表場所
      京王プラザホテル新宿、新宿(東京都)
    • 年月日
      2016-06-03 – 2016-06-05
  • [学会発表] Reelin coupled with myelin may play a role in long-term maintenance of myelin2016

    • 著者名/発表者名
      Kimiko Deguchi, Takao Honda, Ken-ichiro Kubo, Kazunori Nakajima, and Ken Inoue
    • 学会等名
      21st Biennial Meeting of the International Society for Developmental Neuroscience (ISDN2016)
    • 発表場所
      Antibes-Juan les Pins, France
    • 年月日
      2016-05-11 – 2016-05-14
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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