研究課題
本年度は、早産児脳傷害モデルマウス作成とヒト羊水幹細胞の神経分化能の確認を行った。新生児マウスを生後3-11日目(P3-P11)の期間、約10%の低酸素環境下で飼育するモデルが早産児脳傷害モデルとして知られている(Neonatal chronic hypoxia model: CH model)。本年度、申請者らはCH model マウスを作成し(低酸素群)、通常酸素環境下で飼育したマウス(通常酸素群)の児体重と脳重量、脳/体重比、側脳室面積を比較した。P3の体重は両群で同等であったが、P11では低酸素群で有意に低下した(通常酸素群5.159±0.237g,低酸素群2.795±0.106g)。また、P11における脳重量は低酸素群で有意に低下したが(通常酸素群0.328±0.01g,低酸素群0.239±0.009)、脳/体重比は低酸素群で有意に増加した(通常酸素群6.36±0.223%、低酸素8.54±0.355%)。これらのCH modelマウスの表現型は既報と同様であった。昨年度の検討で、CD117陽性羊水細胞は、間葉系マーカー陽性、単球・造血幹細胞・白血球マーカー陰性で、骨・軟骨・脂肪分化能を持つ事から間葉系幹細胞の定義を満たす細胞であることが示されていたが、本年度はさらに、適切な分化誘導培地下において胚葉を超えて神経細胞に分化する事を確認した。申請者は、低酸素負荷開始時のP3マウスにヒト羊水幹細胞を腹腔内投与し治療効果の検討を行った。しかし、マウスが余りにも小さく、安定した実験系確立には至らなかった。このため、来年度は低酸素負荷終了後のP11マウスにヒト羊水幹細胞を腹腔内投与し治療効果を検討する計画とする。また、「神経系細胞に分化誘導したヒト羊水幹細胞投与」による治療効果も検討したいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
当初、成熟児脳障害と早産児脳障害に対するヒト羊水幹細胞の治療効果の検討は、それぞれ順番に行っていく計画としていた。しかし、短期的治療効果を検討するために必要な基本手技、抗体などが共通点が多いため、2つのモデル動物に対するヒト羊水幹細胞の治療効果をまとめて検討する方が効率的ではないかと考え、昨年度末に実験計画を変更した。本年度、早産脳傷害モデルを確立したことで、来年度はこれら2つの周産期脳障害モデル動物に対するヒト羊水幹細胞の治療効果をまとめて検討出来る体制が整ったと考えている。
本年度は、成熟児脳傷害モデルマウスおよび早産脳傷害モデルマウスにヒト羊水幹細胞を投与し、治療効果を検討する。治療効果は短期と長期に分けて検討する.短期的治療効果は主に分子生物学的手法で検討する.Neuron, Oligodendrocyte, Astocyte, Microgliaのマーカー分子や,アポトーシス,細胞増殖マーカー,活性酸素代謝産物マーカーを検討する。なお、使用する抗体の大半は既に基本的条件検討を終えていることから、2つのモデルマウスを用いてスムーズに短期的治療効果の確認が可能であると考えている。また、短期的治療効果が得られた場合には、長期的効果の検討を計画したい。長期的治療効果に関しては,分子生物学的手法に加えてローターロッドやモリス水迷路による行動・運動解析も行う計画を考えている。
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