研究課題/領域番号 |
15K09725
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
有光 威志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383840)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 近赤外分光法 / 小児医学 / 新生児医学 / 脳神経疾患 |
研究実績の概要 |
これまでに、新生児の母親声に対する脳反応について研究してきた。母親声が新生児の呼吸に影響を与えるという報告はあるが、母親声に対する脳反応と呼吸の関係についての報告は少ない。今年度は、脳波を用いて、母親声を聴いた時の正期産児の脳反応と呼吸数の関係について検討した。当院で出生した正期産児21名が対象となった。刺激として、録音した自分の母親の朗読音声と、録音した未知の母親の朗読音声を用いた。声を聴いた時の脳波、心電図、呼吸性胸郭運動を測定し、心電図のRR間隔から導出した交感神経指標と脳波のデルタ変動の最大振幅を調べた。自分の母親の声を聴いた時と未知の母親の声を聴いた時では、交感神経指標と呼吸数の変動には有意差を認めなかった。しかし、交感神経指標と呼吸数の変動は有意に相関した。交感神経指標が高く呼吸数の変動が大きい場合は、未知の母親の声を聴いた時に瞬時呼吸数は急速に増加したが、自分の母親の声では増加しなかった。一方で、自分の母親の声を聴いた時には、前頭葉における脳波のデルタ変動の最大振幅は大きくなった。さらに、脳波のデルタ変動の最大振幅は瞬時呼吸数と負の相関があった。交感神経指標が高いときは、自分の母親の声は瞬時呼吸数の増加を防ぐこと、そして、その効果は正期産児の前頭葉の機能と関係があることが示唆された。今後、早産児について検討し、本研究が発達することで、早産児の脳室周囲白質軟化症における高次脳機能障害のメカニズムを明らかにできる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正期産児の母親声と非母親声に対する脳反応と呼吸の関わり合いについての解析が進み、研究成果を論文発表した。さらに、正期産児と早産児の母親声と非母親声に対する脳反応ついての詳細な解析が順調に進んでいる。また、睡眠時の脳領域の結合に関する正期産児と早産児についての解析、および言語の音韻・抑揚変化に関する正期産児と早産児の解析も順調に進展しており、論文を投稿中である。そして、視線計測についての研究も進んでいる。正期産児、早産児共に、解析がおおむね順調に進んでおり、来年度さらに研究を発展させることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進展しており、現在の研究を継続していくことが、成果の発展へと結びつく。今後の研究計画としては、大きく3つの目標があり、1)平成29年度で得られた、脳反応と呼吸を含めた生理指標の解析を進めて成果発表すること。具体的には、母親声や言語の音韻・抑揚変化に対する脳反応および睡眠時の脳領域の結合について解析する、2)平成29年度でデータが得られた、近赤外分光法を用いた新生児の脳反応と視線計測の結果を、正期産児と早産児と脳室周囲白質軟化症について比較し成果発表する、3)脳室周囲白質軟化症モデルを用いた新生児の脳反応についての検討、である。平成29年度で新生児の脳反応と生理指標の解析および母親声と睡眠時の脳領域の結合の解析が進んだため、論文発表をする。さらに、脳反応と視線計測の関係について、正期産児と早産児と脳室周囲白質軟化症において発達を調べ成果発表する。近赤外分光法と視線計測で得られた知見を、細胞や組織レベルで評価するため、脳室周囲白質軟化症モデルの作成し、脳機能障害のメカニズムを探る。
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