研究課題
昨年度に引き続きマウス早産モデル作成を試みた。平成28年度は、結果として母体帝王切開により成長可能な最も早い胎齢は胎生17日であった(通常18日で出生)。早産マウスではネフロンが形成されるnephrogenic zoneが生後7日まで観察され、8日(修正日齢7日)には消失した。対照マウスでは生後8日に若干nephrogenic zoneがみられ、完全に 消失するのは9日であった。したがって早産マウスでは本来予想される日より1-2日前にネフロン形成が終止することが示された。平成29年度の早産マウスは帝王切開後の呼吸障害を脱しても、代理母からの授乳がうまくいかないせいか、数日間生存する仔の数は限られた。また最も早い時期に生存可能なのはE18.5であった。自然分娩のばらつきの範囲内であり、対照と差が認められたとしても出生時間の差なのか、呼吸、栄養の差によるのか判定不能である。かろうじて12時間早く生まれて生き延びた新生仔腎を対照仔と比較したところnephrogenic zoneは日齢8でほぼ消失、対照と変わらなかった。すなわち早産ではネフロン形成が早期に終止するという仮説を立証することはできなかった。ネフロン前駆細胞のマーカーcited1、nephrogenic zone 消失に先立ち発現し約日齢3日前で消失する、経時的に比較したが、早産、対照ともに生後9日まで発現していた。生後3日でcited 1発現が消失するという過去の報告と異なる理由は、ウェスタンブロットで評価したため過去に用いられた免疫組織染色より感度がよく後期まで検出できたためと考えられた。結論としてマウスで対照と明らかな差がみられる早産モデルを作成するのは難しい。
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