【目的】コリンは細胞膜リン脂質の必須構成成分であり、成長過程の乳児の脳や肝臓にとって重要な物質であるが、早産児を対象とした検討は少ない。そこで、NICU入院中の早産児における尿中コリン代謝産物について栄養方法別の比較、さらに生後1か月の正期産児との比較を行った。 【方法】当院にて出生した在胎28~31週の早産児を対象とし、母乳栄養(PB)群11例、混合栄養(PM)群9例について、経静脈栄養が終了し全身状態の安定した生後14~29日の間に採尿し、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)法によるメタボローム解析を施行した。測定項目のうち、コリン、NN-ジメチルグリシン、ベタイン、サルコシンについて、クレアチニンで補正した値を両群間で比較検討した。さらに当院で正期産児として出生した生後1か月の母乳栄養(TB)群13例、人工栄養(TF)群6例のデータとも比較検討した。 【成績】PB群とPM群、TB群とTF群との間に在胎週数、出生体重、採尿時の体重に有意差を認めなかった。PB群における尿中コリンおよびNN-ジメチルグリシン排泄はPM群に比べ有意に低値であり(p<0.05)、最も排泄量の多いグリシンも低い傾向が認められたが(p<0.0527)、最も排泄の少ない尿中サルコシンは両群間で有意差を認めなかった。PB群ではTB群に比べ、NN-ジメチルグリシン排泄が有意に低値であったが、コリン、ベタイン、サルコシン排泄は両群間に有意差を認めなった。PM群ではTF群に比べ、4項目いずれの排泄も高値であった。 【結論】安定期の早産児において、尿中コリン代謝物排泄は正期産児と比べて大きな相違はないが、正期産児とは異なり母乳栄養児で低くなる傾向が示された。早産児用と正期産児用とで人工乳のコリン代謝物組成が異なる可能性があり、人工乳改良の観点からもCE-MS法による尿メタボローム解析は有用と考えられた。
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