研究実績の概要 |
本研究のターゲットであるHSP70には、近似のアミノ酸配列を持つHSP70ファミリーメンバーが多数存在する。満期胎仔の動脈管に高発現するHSP70種を確定すべく、昨年度から検討を重ねた結果、HSPA1であることを突きとめた。 すなわち、mRNAの発現定量実験の結果などから候補としたHSPA2, HSPA8, HSPA1(家兎)の全コード領域のクローニングを実施し、大腸菌発現用ベクターに挿入した。それぞれのHSP70を10xHis-融合タンパク質として大腸菌を用いて発現し、ニッケルビーズアフィニティカラムを用いて精製した。動脈管に発現するHSP70を検出する市販のモノクローナル抗体(W70)を用いて、これら3種類の発現HSP70のウェスタンブロットを検出したところ、HSPA1のみを検出した。よって、家兎満期胎仔動脈管に発現するHSP70は、HSPA1であることが明らかとなった。これらの3種類のHSP70を抗原として用いてマウスポリクローナル抗体を現在調製しており、免疫染色やウェスタンブロットなどの際の免疫的検出や、相互作用するタンパク質を検索するための免疫沈降などの実験に供する予定である。また、W70抗体で検出するHSP72 (HSPA1が、コードするタンパク質の一般名)のエピトープを部分欠損変異を入れた発現HSP72などを用いて決定する予定である。 次年度は、引き続きHSPA1(HSP72)の動脈管における役割・機能について、アポトーシス抑制作用や抗酸化作用のシグナル伝達を中心に検討を進め、動脈管ストレスとHSP27のリン酸化の関係についての研究も進める予定である。
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