研究課題/領域番号 |
15K09731
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
島 義雄 日本医科大学, 医学部, 教授 (70714765)
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研究分担者 |
根岸 靖幸 日本医科大学, 医学部, 助教 (50644580)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後期早産 / 自然免疫 / 樹状細胞 / NKT細胞 |
研究実績の概要 |
早産(妊娠37週未満での分娩)は周産期死亡の最大の原因として重要であり、近年その割合は増加傾向にある。これまで絨毛膜羊膜炎は早産の原因として最も重要とされてきたが、なお原因不明の早産の割合はきわめて多い(Lahra, et.al., Am. J. Obstet. Gynecol., 2004)。この妊娠の維持機構やその破綻である早産メカニズムに関して、免疫制御の果たす役割は大きい。事実生殖免疫の分野においては、近年NK (natural killer)細胞、樹状細胞(DCs: dendritic cells)、マクロファージ、NKT(Natural killer T)細胞などの自然免疫担当細胞や制御性T細胞(Treg: regulatory T)の重要性が注目されている。しかしながらその早産に対するメカニズムの詳細は不明である。 本研究では、母体/胎児の接点である胎盤組織に存在する樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、NKT細胞など自然免疫担当細胞を中心とした量的、質的分析を行い、主に絨毛膜羊膜炎を伴わずこれまで詳細不明とされてきた後期早産事例の機序を解明する。具体的にはヒト後期早産胎盤より得られた免疫細胞群の解析を中心に研究を進めている。フローサイトメーター、免疫組織染色法や、ex vivoでの細胞培養を行い、各免疫細胞群の集積、機能変化を解析している。 本件研究により、これまで原因不明とされてきた早産事例に対してそのメカニズムを解明、さらに予防治療への戦略を構築できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究成果により、妊娠34週~37週未満で分娩に至った後期早産胎盤脱落膜では、DEC-205陽性樹状細胞の集積が認められ、さらに絨毛膜羊膜炎を伴わない場合NKT細胞が、一方絨毛膜羊膜炎を伴う症例ではNK細胞の集積も認められた。ex vivoの検討により、この絨毛膜羊膜炎の有無によるNKT細胞/NK細胞の分布の違いは、樹状細胞の機能の違いによるものであることを見出した。この結果は下記の論文に掲載となっている。
Distribution of invariant natural killer T cells and dendritic cells in late preterm birth without acute chorioamnionitis. American Journal of Reproductive Immunology, 2017, in press. Negishi, Y., Shima, Y., Takeshita, T., and Takahashi, H.
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今後の研究の推進方策 |
上記の如く、これまで絨毛膜羊膜炎を伴わない、従来原因不明に分類される早産事例では、樹状細胞ーNKT細胞のネットワークが重要であることを見出した。このことは絨毛膜羊膜炎の有無により樹状細胞の機能が異なることを示唆している。 樹状細胞は様々な因子で活性化を受けるが、近年感染微生物より放出されるPAMPs (Pathogen-associated molecular pattern molecules)や損傷組織から放出されるDAMPs (damage-associated molecular pattern molecules)は免疫作動物質として注目されている。樹状細胞はこれらリガンドのレセプターを有しており、PAMPs, DAMPsの影響を強く受けることが予想される。現在申請者らは、本研究で早産脱落膜中で樹状細胞の集積が認められたことをヒントに上記のPAMPs、DAMPsの影響を調べることを計画している。具体的には、各種PAMPs, DAMPsの産生を早産胎盤で検索、さらにex vivoにおいてこれら抗原と免疫細胞群との相互作用を検索する予定である。 一方、各免疫細胞群の分布を、妊娠34週未満で早産に至る症例にも拡大し、同様に各細胞群の集積、機能変化も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例数に従い、適宜必要な抗体、試薬を購入している。検体採取、実験は分娩の有無にかかわるので、その為次年度使用額が生じたと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、胎盤・脱落膜中の各免疫細胞群を抗体を用いてフローサイトメーター、免疫組織学的検索を行う。またex vivoにおいて様々な糖脂質抗原、DAMPsとのきょうばいよう実験も計画している。具体的には糖脂質抗原OCH、β-glucosylceramide (β-GluCer)、high mobility group box 1 (HMGB1)、の購入、培養実験も計画している。
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