研究課題/領域番号 |
15K09732
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
島田 ひろき 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60278108)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳発生 / 血液脳関門 / 胎盤 / 白血病抑制因子(LIF) / 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) |
研究実績の概要 |
胎児大脳皮質のニューロン形成を促進する母胎間-白血病抑制因子(LIF)/副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)シグナルリレーが,同時に胎児脳の血液脳関門(BBB)形成も促進するという作業仮説のもと以下の研究を行った。 胎仔脳のBBB形成を脳全体で時系列に比較するため,平成27年度までに開発した透明化液で処理し,BBB構成蛋白質のwhole mount免疫染色をおこなった。改良型共焦点レーザー観察装置(平成27年度報告)で観察したところ,血管内の赤血球のヘモグロビンの自家蛍光により詳細な観察が困難であった。ヘムをさらに除去するため長時間処理をおこなったところ,組織の破壊がみられた。そこで,マイルドでありながら,より色素を除去できる透明化法を検討した。その結果,本研究に適した透明化法を開発した(特許出願準備中)。また,それをさらに改良し,発生研究で有用な素材であるゼブラフィッシュのメラニン色素を組織破壊せず脱色・固定する方法を開発した(第122回日本解剖学会学術集会発表)。 LIF/ACTHリレー発動の前にLIFを投与することにより,リレー発動時期を人為的に移動させてBBB形成過程を解析することを試みたが,個体によるばらつきがみられた。これまで発動の有無は胎仔摘出時に胎盤のリン酸化STAT3 (p-STAT3)の変化をWestern blot法で確認することによっておこなっていた。しかし,この方法では発動されたか否かが解析時までわからず,時間と試料が無駄となる場合がある。特に動物試料をなるべく有効に使用しなければならず,LIF投与時に発動の有無をモニタリングすることが必要となった。そこでより簡便にLIF投与時にモニタリングする方法を検討した。その結果,LIF投与1時間後に採血を行い,AlphaScreen法によりp-STAT3を測定することでモニタリングできることがわかった(第122回日本解剖学会学術集会発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では正常発生過程のBBB形成を,BBB構成蛋白質のwhole mount 免疫染色でおこなう予定であったが,透明化法の改良に時間がかかり,まだ,一部しか形態解析できていない。また,LIF投与による人為的LIF/ACTHリレー発動をおこなって形態解析および遺伝子解析をおこなう予定であったが,一部しかおこなっていない。現在,これらの解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.BBB形成過程の形態学的解析:正常発生過程でのBBB形成を構成蛋白質および構成細胞の免疫染色によって解析する。また,poly(I;C)投与による母体感染モデルと比較をおこなう。 2.LIFシグナルによるBBB形成過程の変動解析:人為的LIF投与によってLIF/ACTHリレーの発動をずらしたマイクロダイセクション試料のRNAアレイ解析をおこなう。また,母体感染モデルによる変化もアレイ解析でおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた形態学的解析に使用する費用が,実験計画通りいかず少なくなってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫学的解析に用いる予定である。
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