研究課題/領域番号 |
15K09733
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
岩田 幸子 久留米大学, 医学部, 助教 (40465711)
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研究分担者 |
岩田 欧介 久留米大学, 医学部, 准教授 (30465710)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 新生児 / 脳 / 近赤外線 / 画像診断 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
本研究では,発達障害リスクを有する新生児集中治療病棟入院児において,近赤外光の散乱係数を用いて,児の脳微細構造の発育変化をリアルタイムで観察し,最終的には脳の微細損傷をベッドサイドで評価する手法を確立することを最大の目的としている. 研究初年度には,本研究の前提として,新生児脳の散乱係数の経時変動およびその変動の原因因子を検証するため,ハイリスク児の散乱係数を生直後から連続的に計測し,臨床背景や経過と比較した. 今回,60人の早産児および正期産児に対し,生後7日以内に初回,以後退院するまで週一回の頻度で散乱係数を測定,および退院時には頭部MRIを撮影し,予後予測のためのバイオマーカーとして利用した.これまでに初回散乱係数と出生時の臨床所見との関係に関する解析が完了している.先行研究と同様,生直後の新生児脳において,在胎週数と散乱係数が有意な線形正相関を示し,脳内の構造複雑化を反映し近赤外光の散乱が大きくなると考えられた.さらに,未熟性のみならず,緊急帝王切開,人工呼吸器管理といった出生時にストレスに晒された場合,散乱係数が低くなることを見出した.今後,同データから散乱係数が,経過中の修正在胎週数に応じた微細脳構造の複雑化を反映しているかどうか,また,その臨床所見上の影響因子同定が期待できる. 現在,多数の固定因子の他,ランダム因子の加味が必要なことを考慮し,ハイリスク新生児から健常出生児まで,幅広く多数の症例をリクルート中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,初年度は,倫理委員会に申請する準備期間を考慮し,約35症例のエントリーを目指す予定であったが,近赤外線検査の使用経験が功を奏し,想定以上の症例確保が可能であった.この内,退院前(予定日周辺)拡散強調画像含む頭部MRIは,約10症例に施行している. 現時点での限られた症例数であるが,生直後の近赤外光散乱係数と臨床所見との比較検討を終え,現在,国際誌に投稿中である.また,散乱係数の経時変化と臨床所見との比較も解析中であり,いずれ,同様に投稿する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
症例エントリーを進める.引き続き,近赤外線検査(散乱係数計測),頭部超音波検査(器質的異常や発育評価)を継時的定点測定し,予定日周辺での頭部MRI(拡散強調画像上の定量値測定)を行う.さらに,初年度エントリーした児から,順次,修正18か月における短期予後(対面式発達評価)を行う.発達評価に関しては,すでに外来体制が整備されており,実施に際しての障害はないものと考えられる. これまでは,早産児を中心に新生児集中治療病棟に入院中の児のみが対象であったが,健常児も積極的にエントリーする様働きかける.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,新生児専用の時間分解近赤外線ファイバーおよび超音波プローブという初期投資費用を計上していたが,本年度は,既に保有しているものを使用することが可能であったため,購入に至らなかった.ただ,整備上の保証期間が過ぎており,いずれ,購入の必要がある.
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次年度使用額の使用計画 |
健常児対象者の一部に,正常コントロールとして頭部MRIを施行するにあたり,謝金を用意する. また,解析結果を順次,国内の小児科・新生児専門関連学会学術集会において発表するため,旅費として30万円を計上する.
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