研究課題
本研究は,発達障害リスクを有する新生児集中治療病棟入院児を対象に,近赤外光の散乱係数を用いて,児の脳微細構造の発育変化をリアルタイムで観察する一方,退院時に近赤外線と頭部MRIの同日記録を敢行することで,最終的に,脳の微細損傷をベッドサイドで経時的に評価する手法を確立することを目的としている.具体的には,ハイリスク新生児から健常出生児まで幅広いバックグラウンドを有する約120例において,生後7日以内を初回とし,以後退院するまで週一回の頻度で近赤外光散乱係数を測定,および退院時には頭部MRIを撮影するという経時データを,初年度から2年間半にわたりリクルートした.生後間もない新生児脳(日齢7以下)の散乱係数と臨床所見との比較検討において,これまで明らかとなっていた在胎週数との正相関のみならず,児のストレス状態を反映した変化が認められ,既に国際誌に発表している.同一個体から得られた散乱係数経時変動と,その変動の臨床的影響因子の検討結果は,現在,投稿中である.および,散乱係数経時変動と退院時MRI(拡散強調画像)で得られたADC値との比較についても,現在,投稿準備中である.さらに,今年度は,リクルート症例を外来フォローアップする中,修正18か月に到達した時点で対面式発達評価を行った.症例数は,里帰り分娩でフォロードロップアウトした約15例を除く,50例に上る.現在,入院中の散乱係数変化が,予後予測のためのバイオマーカーとして利用可能かどうか解析中である.
2: おおむね順調に進展している
予定エントリーの8割である120例確保でき.この内,退院前(予定日周辺)拡散強調画像含む頭部MRIも,約80症例に施行した.そして,50例は,対面式発達検査まで完遂した.拡散強調画像の解析を終え,そのADC値と入院時および退院時の近赤外線散乱係数の相関を統計学的に検討した.また,本研究と平行して,唾液コルチゾールを用いて周生期ストレスの研究を行っているが,授乳関連因子(授乳時間や授乳方法など)がコルチゾールに与える影響や,胎児期因子が生後のコルチゾール日齢変化に及ぼす影響について,現在,論文投稿中である.なお,2017年6月,日本小児神経学会学術集会のシンポジウムにおいて,同内容の発表を行った.
新生児期に本研究にエントリーした児で,順次,修正18か月における短期予後(面接式発達評価)を行う.さらに,外来フォローを継続し,修正36か月時点でも同様に面接式発達評価を行う.観察期間を延長しても,ドロップアウト症例は少ないと予想され,また,発達検査法は確立されていることから,実施に際しての障害はないものと考えられる.発達評価時期の延長により,評価項目として運動発達より言語・社会・認知・適応に重点を置いた詳細な検討が可能となる.
発達検査を拡大施行するにあたり,心理士への謝金を用意する.また,解析結果を順次,国内の小児科・新生児専門関連学会学術集会において発表するため,旅費を計上する.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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