本研究は,発達障害のリスクが高いNICU入院児に対し,近赤外光の散乱係数を用いて,児の脳微細構造の発育変化をリアルタイムで観察する手法の妥当性を検証することを目的としている.退院時に取得した時間分解近赤外線分光法(TR-NIRS)と頭部MRIの同日記録により,MRIで認められる脳の微細損傷を,TR-NIRSを用いてベッドサイドで手軽に・非侵襲的に評価できないかを検討する. 最終年度までに予定された約150症例のハイリスク新生児において,TR-NIRSの記録を行うことができた.うち94症例において拡散強調画像を含むMRI定量画像を取得することができた.現在脳内各部位ごとの拡散係数(ADC)および方向性拡散係数(FA)を取得するための画像処理を80%以上終了し,TR-NIRSで測定した近赤外光の散乱係数との比較を行っている.また,TR-NIRSを取得した児の修正18か月及び満3歳における対面式の心理発達評価を継続的に行い,修正18か月の発達評価は約70症例で完了している.今後新生児期のTR-NIRSで定量した散乱係数と,定量的MRI測定値および認知・言語・運動発達との相関を評価し,順次論文化してゆく予定である.これまでに本コホートをもとに発見した事項を,3編の英文として公表済みであり,今後少なくとも4編の英論文を投稿中もしくは投稿準備中である.
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