研究課題/領域番号 |
15K09734
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
松原 圭子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 研究員 (90542952)
|
研究分担者 |
和田 友香 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期センター, 医師 (80399485)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | インプリンティング異常症 / 筋緊張低下 |
研究実績の概要 |
本研究では、筋緊張低下をきたす新生児・乳幼児を対象にIDsの診断を目的とした分子遺伝学的解析を行い、筋緊張低下をきたす新生児・乳児におけるインプリンティング異常症(IDs)の頻度を明らかにすることを目的とする。本研究により、今まで未診断であった筋緊張低下を示す新生児・乳児の原疾患の確定診断が可能となり、診療方針の決定や遺伝カウンセリングに有用な情報をフィードバックすることができる。また、新生児・乳児期の筋緊張低下発症機序の少なくとも一端が解明され、新生児の神経学的発達に対するインプリンティング遺伝子の関与の機構が解明されることが期待される。 本研究では、PWSに対する先行研究にならい「新生児集中治療部および小児神経科の医師より筋緊張低下を有すると判断された0-2歳の新生児・乳児」を対象に末梢血由来DNAを収集し、パイロシークエンス法によりIDs 8疾患スクリーニングおよびaCGH法による微細染色体構造異常の有無を検索する。 当該年度においては、21名の筋緊張低下を有する新生児・乳児症例の血液および臨床情報の解析を行った。このうち、15q24 microdeletion syndromeが1名、Temple症候群が1名、臨床的意義の不明なコピー数異常が2名(11q25 duplication、10q25 monosomy)で認められた。前年度解析分と合わせると、全解析症例61名中、IDsは5症例(8%)(Silver-Russell症候群1名、Temple症候群3名、Prader-Willi症候群4名、Beckwith-Weidemann症候群1名)、染色体微細構造異常症例は6名(10%、臨床症状との関連が不明な例も含む)であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初以前に主に解析対象症例のリクルートを行う分担研究者とともに実際の臨床現場に状況に即したinclusion criteriaを策定した。当該年度ではこれに基づき解析対象症例の収集を行ったところ、順調にサンプル収集が行われたまた、当該年度の研究を推進するにあたり、パイロシークエンス法をはじめとするIDs解析手法がすでに確立されていたことから、当該年度における分子遺伝学的解析はスムーズに行えたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題における今後の推進方策について、研究実施計画ごとに列記する。 ① 解析対象症例の収集:本研究では、PWSに対する先行研究(文献1、2)にならい「新生児集中治療部および小児神経科の医師より筋緊張低下を有すると判断された0-2歳の新生児・乳児」を対象とし、前方視的に解析対象症例を収集する。当該年度では、21例の筋緊張低下症例の臨床情報および末梢血由来DNAが集積している。また、平成29年度以降も引き続き解析対象リクルートを行い、臨床症状や患者背景因子の検討、分子遺伝学的解析を進める。 ② Pyrosequencing法によるメチル化状態スクリーニング:末梢血白血球由来DNAをBisulfite処理後、Pyrosequencing法により9か所のメチル化可変領域メチル化状態を解析し、IDs全疾患のスクリーニングを行う。これについてはすでに解析系が確立しているが、陰性コントロールおよび陽性コントロールを用いた精度管理を継続して行う。 ③ 各解析対象症例に対するIDs発症原因の同定: 本研究では、②でメチル化異常が認められた症例に対し、Methylation Specific Multiplex Ligation Probe Amplificationやマイクロサテライト解析などの分子遺伝学的手法を用いて、対象症例のIDs発症原因を同定する。これらについてもすでに解析系は確立しており、前項と同様に精度管理に努めながら、解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に収集されたサンプル数に対して行う解析に必要な試薬をすべて購入したうえで次年度使用額が生じた。これは、当該年度に収集されたサンプル数が当初の予定より若干少なかったためであると考えられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は翌年度分の助成金と合わせて、分子遺伝学的解析に要する試薬購入、学会での成果発表、論文の掲載費などとして支出予定である。 次年度にはさらに多くの検体は収集されることが見込まれており、助成金の中でも試薬購入が主な使用目的となる予定である。
|