研究実績の概要 |
未熟児動脈管開存症(PDA)は早産児の重要な合併症であり、シクロオキシゲナーゼ阻害薬が奏功しない重症例で手術が行われる。心臓超音波検査は早産児のPDAの主要評価法だが、どの指標が手術の必要性を予測するかについて、十分な症例数による検討はなかった。我々は未熟児動脈管開存症の手術を予測する心臓超音波検査指標を明らかにするために多施設共同研究を行った。 日本の34の新生児集中治療室で、14ヶ月間、在胎23週から29週出生の早産児の臨床所見と心臓超音波検査を、日齢1, 3, 7, 14、およびシクロオキシゲナーゼ阻害薬投与前、手術前に記録した。心臓超音波検査指標は、左室拡張末期径(LVDd)、左房大動脈径比(LA/Ao)、左房容量(LAV)、左肺動脈拡張末期血流速度(LPAedv)、動脈管径(PDAd)を計測した。手術の有無と各指標の関連を、在胎週数、性、および不当軽量児を調整因子として多変量ロジスティック分析により検討した。 主要データに欠損値のない691例が登録された。このうち61例(8.8%)で、経過、臨床、検査所見に基づき手術が施行された。各心臓超音波検査指標は全て手術と有意に関連していた。ROC曲線のAUCはPDAdが最も大きく、次にLPAedvであった(LVDd 0.782, LA/Ao 0.747, LAV 0.791, LPAedv 0.802, PDAd 0.860) 心臓超音波検査は未熟児動脈管開存症の手術の必要性を判断するのに有効であることを明らかにできた。PDAdとLPAedvは、計測の簡便性もあり、特に有用なPDAのop関連指標と考えられた。今後、本研究で構築されたデータベースを基に各超音波検査指標とその他の早産児予後との関連をサブ研究につなげていく予定である。
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