研究課題/領域番号 |
15K09736
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
道上 敏美 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 環境影響部門, 部長 (00301804)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リン輸送 / 胎盤 / 胎仔 |
研究実績の概要 |
胎児期には、急速な骨格の形成および成長を促すために、多量のカルシウム (Ca) およびリンが経胎盤的に母体から胎児に移行する必要があり、胎児血における血清Ca値およびリン値は著明な高知をとるが、その機序は明らかではない。 低リン血症を呈するHypマウスにおいては、母体の低リン血症にもかかわらず胎仔の血清リン値は野生型妊娠マウスの胎仔と同等であるところから、Hyp母体の胎仔の胎盤においては、リンの経胎盤輸送を担う分子の発現が増加していることが予測される。そこで、E18.5の野生型マウス母体およびHyp母体より胎仔および胎盤を摘出し、胎仔もgenotyping後、野生型母体、Hyp母体のメス胎仔胎盤からRNAを抽出し、Aglilent Array解析に供することにより、Hyp母体由来胎仔胎盤で発現が変化している遺伝子群の道程を試みた。以前報告したとおり、Cyp24a1の発現が増加していることを確認した。群間比較解析では、信頼性の低いデータを除去(フィルタリング)したのち、有効プローブを用いて統計解析t-testを行い、p-value<0.05を満たす8073プローブが抽出された。これらについて、シグナル平均値から発現比を算出し、+/-2倍以上の変化を示した969プローブを抽出した。 Arrayで同定された遺伝子ではないが、リンのexporterであるXpr1の胎盤における発現を検討したが、差を認めなかった。RNAレベルでは、Slc34a2、Pit1、Pit2にも発現差がないことを以前の検討で報告している。蛋白質レベルの発現についてはSlc34a2、Pit1、Pit2、Xpr1のいずれについてもまだ検討できていないが、Hyp妊娠において、胎仔血と母体血のリンの勾配の拡大をもたらしているのが、無機リンの経胎盤輸送ではない可能性も念頭に置く必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、平成27年度にHyp母体と野生型母体由来の胎仔胎盤における網羅的な遺伝子発現解析を行い、発現に変化が見られた遺伝子群を抽出した。Cyp24a1の発現がHyp母体由来胎仔胎盤で上昇していることが確認され、データの信頼性が確認された。現在、同定された遺伝子群について解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
Agilent array により、Hyp妊娠母体由来の胎仔胎盤で発現が増加していることが明らかになった遺伝子群について、解析を進め、リン経胎盤輸送の制御に関わる分子の同定をめざす。 また、胎児のミネラル恒常性維持における、胎児臓器の関与についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
振込料の節約などにより余剰金が759円生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に組み入れて使用する。
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