胎児期には、急速な骨格の形成および成長に適応するため、カルシウム (Ca) とともに多量のリンが経胎盤的に母体から胎児に移行する必要があり、胎児血における血清リン値は母体血や新生児血よりも著明な高値を示す。しかしながら、その分子機序は不明である。 我々はこれまで、低リン血症を呈するHypマウスの妊娠においては、母体の低リン血症にもかかわらず胎仔の血清リン値は野生型妊娠マウスの胎仔と同等レベルの高値を示すことを見出しており、このことはHyp母体の胎仔の胎盤においては、リンの経胎盤輸送を担う分子の発現が増加している可能性を示唆する。そこで、E18.5の野生型マウス母体およびHyp母体より胎仔および胎盤を摘出し、胎仔もgenotyping後、野生型母体、Hyp母体のメス胎仔胎盤からRNAを抽出し、Aglilent Array解析に供することにより、Hyp母体由来胎仔胎盤で発現が増加している遺伝子群を同定した。現在、これらの分子について解析を進めている。 また、胎児血の血清リン値が母体血や新生児血より高値を示す理由として、リン濃度の感知の閾値が異なる可能性があるが、哺乳類におけるリン感知機構は不明である。骨芽細胞株を用いた検討を行い、細胞外無機リン酸濃度の上昇がFGF受容体を介して細胞内にシグナルを惹起することを見出した。骨格の成熟過程でリン酸惹起シグナルに対する応答性が変化する可能性があり、検討を進めている。
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