研究課題/領域番号 |
15K09744
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岩月 啓氏 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80126797)
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研究分担者 |
三宅 智子 岡山大学, 大学病院, 助教 (30749627) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床 / ウイルス / 感染症 / 癌 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
EBウイルス(EBV)関連皮膚T/NK細胞増殖症の種痘様水疱症(HV)と蚊刺過敏症(HMB)では、EBV感染リンパ球サブセットと宿主免疫応答により特有の皮膚および臨床症状が出現する。我々は、これらの疾患を1)古典型HV、2)全身性HV、3)HMB単独、4)HMB+HV合併例の4型に分類し、予後および予後因子解析を行った。その結果、生命予後は、古典的HVは良好だが、他の3群では、5-10年で生存率は50%に低下することが明らかになった。発症年齢が9歳以上であること、BZLF-1 mRNA発現がみられることが、予後不良因子であった(BJD論文報告)。とくに全身炎症をきたす病型では、EBV再活性化マーカーであるBZLF1 mRNA発現が認められたが、その下流のシグナルの検出率は極端に低下した。すなわち、宿主免疫応答が、EBV再活性化マーカーを認識して、その細胞を排除するために激しい炎症症状を生じると考えられた(JDS論文報告)。 病型に関連するEBV感染リンパ球サブセットは、古典型HVはγδT細胞、HMBはNK細胞であり、全身性HVにはγδT細胞とαβT細胞の両方が認められた。クロナリティ解析に、次世代シーケンサーによるTCRレパトア解析手法を加えたところ、HV皮膚病変にはγδT細胞のクローンが検出された(論文準備中)。 診断的検査用に開発した低侵襲EBV遺伝子発現検査法の鋭敏度と特異度の検定を行い学会発表した。紫外線照射で誘導される皮膚由来因子によるEBV感染γδT細胞遊走、活性化と増殖能については研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)EBV感染リンパ球サブセットの細胞学的特性(平成27-29年度継続):順調に症例集積ができており、データが得られている。2)T細胞受容体遺伝子とEBV遺伝子終末反復配列を用いたクロナリティ解析:クロナリティ解析は、Southern blot法に加えて、次世代シーケンサーによるTCRレパトア解析を導入し、微量な検体からT細胞クローン解析が可能になった。3)紫外線照射で誘導される皮膚由来因子によるEBV感染γδT細胞遊走と活性化:EBV感染γδT細胞株を入手できたので、紫外線照射を行った表皮培養上清を用いて、EBV感染γδT細胞の増殖活性とEBV再活性化シグナルの解析を進めている。4)EBV再活性化と宿主免疫応答の解析:EBV再活性化マーカーであるBZLF1 mRNAとその下流のBDRF1シグナルについての解析を終了し、論文化した。5)病態の進行と予後に関わる分子・細胞マーカーとHLAを含めた遺伝免疫学的要因の探索:再活性化シグナルBZLF1が予後因子であること、さらに宿主免疫応答のsurrogate マーカーになる可能性があることを論文報告した(BJD、JDS)。診断的検査用に開発した低侵襲EBV遺伝子発現検査法の鋭敏度と特異度の検定を行い学会発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28、29年度の研究実施計画 1)EBV関連皮膚T/NK細胞増殖症に関与するEBV感染リンパ球サブセットの細胞学的特性:継続的にデータを集積し、予後との関連を解析する。2)T細胞受容体遺伝子とEBV遺伝子終末反復配列を用いたクロナリティ解析:次世代シーケンサーを用いたTCRレパトア解析を集積する。3)紫外線照射で誘導される皮膚由来因子によるEBV感染γδT細胞遊走と活性化:細胞株を用いた研究が現在進行中である。4)EBV再活性化と宿主免疫応答の解析:再活性化マーカーが皮膚病変部において発現することを見出した。次は、再活性化を誘導する因子についての解析を進める。5)病態の進行と予後に関わるEBV遺伝子発現、分子・細胞マーカーと遺伝免疫学的要因の探索:症例集積と生体試料収集を続け、鑑別診断用のパネルを作成する。患者群におけるEBV特異的免疫応答の欠落を探索すべく、いくつかの標的遺伝子の変異とSNPを解析する。
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