研究課題
ヒトやマウスなどの哺乳類の老化を促進する因子として、特に皮膚に代表される外界に接する臓器においては、外来性の環境因子による老化(外因性老化)について盛んに議論されてきた。 特に紫外線、赤外線やタバコによる皮膚老化、アンチエージングへの対策は、亜熱帯地方に位置する沖縄では公衆衛生学上の課題であり、これら電磁波暴露による遺伝子発現の変化や、真皮の間質成分の変性については、広く解析されてきた。本研究課題は、これまで詳細に解析されてきた紫外線など外来性の環境因子による皮膚の老化(外因性老化)とは異なる、ヒトの皮膚の老化因子としての、血液中のトランスファー可能な因子(内因性老化因子)の探索と、その老化作用の解析を目的とする。 加齢したヒトの皮膚において、何が外的因子による老化病態であり、何か内因性因子による老化現象であるのかを、世代間の並体結合マウスを作製し、その皮膚の変化を網羅的RNAマイクロアレー比較で抽出し、高齢マウスやヒト高齢者の皮膚での蛋白発現変化として比較解析することで、内因性の皮膚の老化現象の本質、さらには可逆性な老化現象の存在の可能性を明らかにしたい。この外因性因子の影響の少ない中枢神経や筋肉における加齢による機能低下、器質的変化に関しては、最近は内因性・血液中のトランスファー可能な老化因子(内因性老化)の存在と、その原因物質の探索が注目されている。 高齢マウスの血清を若年マウスへ静注することで、短期記憶を形成する海馬神経の細胞と樹状突起が減少し、実際に迷路記憶で観察される短期記憶が低下した。筋組織においても、高齢マウスの血清の添加により筋肉量の低下と細胞数が減少している。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、並立結合による血行循環を共有するマウスを作成する準備を進めた。現在、国内の実験動物販売業者より搬入可能なマウスは、月齢8月-10月のマウスが購入可能な最高齢であり、高齢マウス、中年マウスを、マイクロアレーの統計学的な解析で有意となるマウス数を確保できるように、大学内の動物実験施設での飼育を続けた。動物実験施設での飼育期間中に若年マウスを用いて、並体結合術の技術を習得すると共に、コントロールとしてのこの若年マウス施術間の皮膚をサンプリングし、施術のない若年マウスの皮膚とマイクロアレーで発現比較することで、並体結合により影響を受ける遺伝子をコントロールとするための皮膚組織を採取し準備した。さらに生後24月まで高齢化したマウスを老化マウスとして順次、6-8週齢の若年マウスと順次、並体結合術を開始した。並立結合による循環系の接合は、FACSによる血中の白血球マーカーの違いによる各接合マウスに関して確認した。
平成28年度以降は、各種の老化刺激による変動遺伝子の選択として、マイクロアレーの2群サンプル間の比較選択として、1.高齢マウス/若年マウスの皮膚RNA2.高齢マウス間の並体結合術マウス/若年マウスと並体結合術した高齢マウスの皮膚RNA3.高齢マウスと並体結合術した若年マウス/若年マウス間の並体結合術マウスのRNAを順次抽出し、マイクロアレーにより、解析する。生物学的な優位性が得られるように、6例の接合体を準備する。この解析により、2に観察される、若年マウスと並体結合術した高齢マウスにおいて、高齢マウスと比較して発現が減弱する遺伝子は、若年血液因子で改善した老化病態、即ち、何らかの治療介入により、回復可能な皮膚の老化現象であると考えられる。こうして選択した老化表現形を、ヒトの世代毎の多数の病理切片における免疫組織解析で再確認し、相対的変動を多数の皮膚病理切片において、統計学的に数量化し判定する。さらに並体結合した高齢マウスが若年マウスへ与える加齢影響の逆の解析、即ち若年マウスとの並体結合で高齢マウスの皮膚に生じうる逆行性の皮膚の変化を見いだすことで、老化の可逆性に関して、老化皮膚に生じた病態の何が可逆的で、いずれが不可逆的な変化であるのかを検討する。
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