落葉状天疱瘡(PF)血清中の抗デスモグレイン1(Dsg1)抗体は多様性がある。研究代表者が患者リンパ球から単離した抗Dsg1モノクローナル抗体の解析により、水疱形成を誘導する病原性抗Dsg1抗体と水疱形成を引き起こさない非病原性抗Dsg1抗体から構成されていることが判明している。しかしながら、個々の抗Dsg1抗体がポリクローナルな状況下で水疱形成にどのような役割を果たしているのかは不明である。本研究では、モノクローナル抗体と複数のモノクローナル抗体の混合物による水疱形成機序の相違点に着目し棘融解性水疱形成機序を解析している。昨年度まで、ヒト皮膚器官培養系を用いた病的活性測定法により、抗Dsg1モノクローナル抗体単独と比較した場合、複数混合による抗体により、水疱形成能が増強していることが明らかになり、さらに、表皮細胞内のDsg1分子の凝集像と相関していることが明らかになった。 本年度は、PF患者の検体を用いて、Dsg1の凝集が生じているのかを検討した。8例のPFの患者の皮膚生検組織をDsg1抗体とIgGの沈着を2重染色した。全例に於いて患者皮膚組織内でDsg1の凝集していることが観察された。Dsg1の部分ドメインの組換え蛋白を用いたエピトープ解析をすると、すべての症例で複数の領域に対する抗体を認識しており、更にDsg1のトランス結合に重要なEC1領域を認識していた。このことから患者においてもポリクローナルな抗Dsg1自己抗体があり、Dsg1の凝集を誘導することもPFの水疱形成の病態に関与していることが推測された。 この研究成果は2017年12月15日-17日、高知で開催された日本研究皮膚科学会で報告した。
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