研究課題/領域番号 |
15K09751
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
森脇 真一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40303565)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 色素性乾皮症 / 紫外線 / 放射線 / DNA損傷 / H2AX |
研究実績の概要 |
紫外線性DNA損傷の修復欠損で発症する遺伝性光線過敏症(色素性乾皮症;XP、コケイン症候群;CS)患者において、「放射線検査、放射線療法などの放射線使用は本当に安全か?」ということに関してはこれまで様々な研究結果が報告されてきたが、アッセイ系の感度の違いなどから、確立したコンセプトはまだないのが現状である。本研究は、我々が保持している多くの希少なXP、CS患者細胞を用いてこの事象を詳細に再評価し、その病態を解析することが研究の目的である。方法は放射線照射で形成されるDNA二本差切断(DSB)の修復応答をγ-H2AXを指標に蛍光染色にて高感度に可視化し定量化するシステムを用いて検討した。 平成27年度は8種類のXP細胞(XPA;3系統、XPV;5系統)、6種類のCS細胞、1種類のXP/CS(XPG/CS)細胞、コントロールとして3系統の正常細胞、1系統のAT(ataxia telangiectasia)細胞を用いた。その結果、XPA細胞、CS細胞、XP/CS細胞には放射線照射後のγ-H2AX形成に異常はみられなかった。一方、CS細胞、XPV細胞ではγ-H2AX形成に差(正常~低下)がみられることが判明した。この結果はCS、XPVの一部患者ではATR、ATMを介したDSBに関する損傷修復応答に異常があることを示している。 また平成27年度時点で臨床的・細胞学的にXP、CSと診断されているがまだ遺伝型が判明していない細胞についてはXP、CS遺伝子検査を各々3例、1例実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線照射で形成されるDNA二本差切断(DSB)の修復応答をγ-H2AXを指標に蛍光染色にて高感度に可視化し定量化する実験について、年度初めからバックグラウンドのフォーカス数が高い、正常細胞で充分数のフォーカス形成が得られないなどの問題が発生した。そのため、条件検討に4カ月を要してしまった。さらに、同実験について、1細胞株の検討が予想以上に日数を要したため、計画細胞株数が解析できなかった。 また前述の研究に1年を要したため、宿主細胞回復システム(ルシフェラーゼ発現ベクターに放射線照射してDSBを誘発する実験系)を用いた放射線照射後のDSBに対するDNA修復能の定量化実験には平成27年度着手できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度にDNA二本差切断(DSB)の修復応答実験が実施できなかったXP、CS細胞株に関して、まず解析を行い、平成27年度の結果を再確認し立証する。その後、XPV、CSについて、DSB修復応答という表現型と遺伝型との関連を検討する。またXPV、CSについて、患者カルテベースで、放射線を用いた臨床検査の頻度、臨床症状の進行・重症度と遺伝型の関連を「DSB修復応答という表現型」以外の観点から検討する。 またXP、CSの代表的な細胞株を用いて、平成27年度実施できなかった宿主細胞回復システム(ルシフェラーゼ発現ベクターに放射線照射してDSBを誘発する実験系)を用いた放射線照射後のDSBに対するDNA修復能の定量化を試みる。この修復レベルと前述した患者カルテベースの臨床的表現型との関連も検討する。 このような2種類の鋭敏なDNA修復解析系を用いて、XP、CS細胞の一部にはDSB修復障害があることを臨床的かつ細胞生物学的に立証する。今回、仮説が正しいという研究成果が得られれば、XP、CSの遺伝型による放射線障害リスクの予測が可能となるため、XP、CSという国指定となった難病患者、患者に関わる医師には朗報となるものと思われる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
DNA修復のタイムコースを見るにあたり、条件検討のため、一時細胞実験が中断された。そのため、残った細胞の検討分、さらには予定して着手できなかった違うアッセイ系の実験の研究試薬の予算を平成28年度に持ち越す結果となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の計画の達成に向けて、予定細胞株すべてのスクリーニング実験を平成28年度早々に行う。また可能な限り早く第二のアッセイ系の実験に着手する。
|