研究課題
紫外線性DNA損傷の修復欠損で発症する遺伝性光線過敏症(色素性乾皮症;XP、コケイン症候群;CS)患者において、紫外線以外、例えば放射線によるDNA損傷;二本鎖DNA切断の修復機能は正常かということに関しては、明確な結論はまだ出されていない。本研究では、XP、CS患者細胞を用いて「患者の放射線感受性」を詳細に再評価し、異常が確認できればその病態を解析し、「XP、CS患者での放射線を用いた検査の安全性」することを目的としている。方法は放射線照射で形成されるDNA二本鎖切断(DSB)の修復応答をγ-H2AX(H2AXのリン酸化)を指標に定量化するシステムを用いて解析した。細胞レベルで評価できた各々の患者の放射線検査の安全性(放射線照射後、部位の皮膚変化の有無)を臨床的に検討した。平成28年度以降は、本邦で比較的高頻度で多くは高齢になるまで生存できる複製後修復に遺伝的な異常のあるXP-Vに特に注目し、8種類のXPV細胞を解析し、XPV細胞では8症例中4例の患者由来細胞でγ-H2AX形成能にわずかながら(10-20%)低下がみられることが判明した。同修復応答が低下していると思われると正常と低下のない症例では遺伝型、表現型(臨床所見、細胞の紫外線応答)に差異はみられなかった。平成29年度では、前年度、クリアな解析結果が得られなかったXP-V細胞に対して、再評価を実施し、XPV患者の一部ではATR、ATMを介したDSBに関する損傷修復応答に異常があることを確認した。同時に今回のの研究でDSBの修復能)を評価し得た各々のXP-V症例に対して放射線を用いた検査が行われた詳細、照射後の皮膚の異常反応の有無、放射線被爆部位の皮膚の変化をカルテベース、あるいは患者再診時の皮膚科的診察、問診などにより検討した。その結果、XP-V患者には特段、放射線照射による有意な異常反応は見いだせなかった。
すべて 2017
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