近年、メラニン生合成に関わる遺伝子が次々に明らかにされてきたが、不明の点も多く色素異常症に対する有効な治療法も少ない。我々は脂質性セカンドメッセンジャーであるdiacylglycerol (DG)とphosphatidic acid (PA)の代謝に関与するdiacylglycerol kinase (DGK)がメラニン合成に関与し、tyrosinaseの細胞内輸送やMITFの発現を制御することを明らかにしてきた。また、これまでの研究から、メラニン生合成に関与する分子をスクリーニングする過程で、ADAM (a disintegrin and metalloprotease) ファミリープロテアーゼ阻害剤がメラニン量を抑制することを見出した。 メラニン合成に関与する新しいシグナル伝達機構を解析する目的でメラノサイトおよびmelanoma cell lineを培養し、DGK阻害剤を添加し、経時的にERK、AKT、CREB、p38、mTOR、S6 kinase、PKCなどのシグナル分子のリン酸化を解析したところ、いくつかの系でリン酸化が亢進あるいは減少していた。それらの下流のシグナル伝達系とメラニン合成機構との関連の解析を進めたところ、あるシグナル伝達系を阻害することでメラニン合成の鍵となる転写因子MITFの発現がmRNA、タンパク質レベルで減少することが分かった。また メラノソームの構造タンパク質であるPMEL17のプロセッシングに関与する分子の解析を行ったところ、DGKがPMEL17のC末、N末のプロセッシングに関与することを明らかにした。PMEL17のプロセッシングにはいくつかの酵素が関与しているが、その中のBACE2がDGK阻害により減少することを明らかにした。
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