研究課題
移植片対宿主病(GVHD)や全身性エリテマトーデスなどの皮膚症状は自己免疫反応によって生じる病態であり、病理組織ではT細胞の表皮内浸潤や表皮角化細胞死などの苔癬反応を呈している。この病態生理は未だ不明で、また表皮に常在する抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞の機能も分かっていない。そこで、表皮角化細胞特異的に卵白アルブミン(OVA)が発現しているトランスジェニックマウス(Keratin14-promoter-membrane OVA transgenic; K14-mOVA Tgマウス)で、OVA特異的CD8T細胞(OT-I細胞)を移入することで、病理組織像で苔癬反応を伴ったGVHD様の皮膚症状を起こすモデルマウスを用いて解析を行った。Langerinにジフテリア毒素受容体(DTR)が導入されたマウス(Langerin-DTR Tgマウス)にDTを腹腔内投与するとランゲルハンス細胞が除去されたマウスを作製できる。このマウスを交配してLangerin-DTR/K14-mOVA double Tgマウスを作製し、DTを投与しランゲルハンス細胞を除去した後に、OT-I細胞を移入したところ、ランゲルハンス細胞除去マウスにて、GVHD様皮膚症状は増強した。そこで、OVA CD8エピトープ(SIINFEKL)提示Naive脾臓細胞を抗原提示細胞としOT-I細胞と共培養すると、OT-I細胞は増殖するが、ここへK14-mOVA Tgマウスの全身皮膚から磁気細胞分離法でランゲルハンス細胞のみを回収して加えると、コントロールとして、K14-mOVA Tgマウス脾臓樹状細胞を加えた場合と比べて、OT-I細胞はよりアポトーシスを起こしていた。以上より、ランゲルハンス細胞は、自己抗原に反応するCD8 T細胞にアポトーシスを誘導することでGVHD様皮膚疾患を抑制する機構を持つと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
予定通り進捗しており、来年度で完成できると考えている。
ランゲルハンス細胞が自己反応性CD8T細胞死を誘導する機構を同定するため、アポトーシス誘導分子ブロック抗体や遺伝子的欠損細胞を用いて、上述のin vitroの実験系を行う。また、モデルマウスにおいて、ランゲルハンス細胞がその分子を発現していることを、免疫組織学的染色を用いて提示する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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