研究課題/領域番号 |
15K09758
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高崎 真美 筑波大学, 医学医療系, 特任助教 (80392009)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表皮分化 / 胚性幹細胞 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、マウスES細胞を無血清培地中で分散浮遊培養し、形成されたES細胞塊をBMP4存在下にてファイブロネクチン上でさらに接着培養することで、1)非神経外胚葉への分化が誘導されること、2)高い効率で表皮幹細胞(CK15, CK14陽性)への分化が確認され、その発現のタイミングが胚発生の時間軸とよく一致すること、を見いだして来た。また、BMP4存在下にて表皮幹細胞へ分化途中のES細胞を用いて網羅的解析を行い、3)細胞外マトリックスの再構成に関与するメタロプロテアーゼADAMTS-2を同定した。興味深いのは、ADAMTS-2の発現開始時期が表皮幹細胞のマーカー発現に先行していることである。このことは、表皮への運命決定において、メタロプロテアーゼが新規機能を果たす可能性を示唆している。ADAMTS-2は、ヒトにおいて皮膚の脆弱性をおこす難病「エーラスダンロス症候群」の原因遺伝子の一つともされているが、初期発生における表皮への運命決定との関連については報告が無く、その表皮分化における機能の解明は、再生医療の観点からも重要である。 そこで本研究課題では、哺乳類の表皮発生を制御する因子の一つとしてADAMTS-2に注目した。平成27年度は、マウスES細胞の分散浮遊培養で生じるES細胞塊で、BMP4添加条件下でADAMTS-2の機能阻害実験を行い、表皮幹細胞への分化や生存・増殖に与える影響について検証することを目的として実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ADAMTS-2の機能阻害実験をsiRNAのトランスフェクションにより試みているが、siRNA でADAMTS-2の発現を抑制できる期間が予想より短いという問題が生じている。このことが、表皮幹細胞分化におけるADAMTS-2の機能を解析する上での障害の一つとなっている。また、BMP4の効果にロット差があり、表皮分化の誘導効率が不安定になることがあり、実験の遅れに繋がっている。改善策として、低分子化合物による代替法へのスイッチングが必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、特に重点的に推進する研究課題として、ヒトES細胞とヒトiPS細胞の非神経外胚葉分化条件の最適化が挙げられる。これまでマウスES細胞で明らかにした研究結果に基づき、基本的に同様の手法をヒト細胞の実験に順次応用していくが、この際、ヒト表皮発生におけるADAMTS-2の発現解析と機能阻害実験が必須である。そのため、主にshRNA導入によるノックダウンiPS 細胞株の樹立を試み、ADAMTS-2のヒト表皮分化における機能解析を推進する。 また、ヒトの表皮分化調節において ADAMTS-2以外のメタロプロテアーゼが働いている可能性も否めないので、それについても柔軟に対応できるよう準備する。
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