研究課題
前年度までに、ブレオマイシン誘導性強皮症マウスモデルと細胞成長因子誘導性強皮症マウスモデルにおいて、抗CX3CL1抗体治療がCX3CR1陽性のマクロファージなどの細胞浸潤を抑制し、皮膚の線維化を抑制することを報告した。最終年度では、ブレオマイシン誘導性強皮症モデルの皮膚硬化が抗CX3CL1抗体治療によって軽快する機序について検討した。RNAシークエンスやqRT-PCRの結果から、ブレオマイシンの投与はTSLPやSpp1(osteopontin)などの線維化に関与する分子の発現を亢進させたが、抗CX3CL1抗体治療はそれらを有意に抑制した。また、TGF-betaによる培養皮膚線維芽細胞でのコラーゲンやファイブロネクチンの発現を抗CX3CL1抗体は有意に抑制し、CX3CL1-CX3CR1経路が線維芽細胞からのコラーゲン産生などに直接関与している可能性が示唆された。さらに、ブレオマイシン投与によって生じる血管障害を組織透明化処理によって観察したところ、抗CX3CL1抗体治療は破壊性血管炎を抑制することが明らかとなった。研究機関全体として、抗CX3CL1抗体治療はブレオマイシン誘導性と細胞成長因子誘導性の2種類の全身性強皮症のマウスモデルにおいて皮膚硬化の進行を抑制し、その機序としてはマクロファージの浸潤抑制や皮膚線維芽細胞からのコラーゲン産生の直接的な抑制が考えられた。また、ブレオマイシン誘導性のマウスモデルでは、血管障害の抑制効果が確認できた。以上の結果から、CX3CL1-CX3CR1経路を標的とした治療が、全身性強皮症にみられる皮膚硬化や血管障害の治療薬として有望な候補薬であると考えられた。
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