【研究の背景】転写因子Foxp3を発現する制御性T細胞(以下Treg)は、免疫反応を抑制するCD4陽性T細胞である。これまでの研究から、IL-2中和抗体(S4B6)を、幼若マウスに投与してTregを一過性に減少させると、成獣期に自己免疫病を自然発症することが知られている。 【研究の目的と意義】本研究の目的は、Tregの一過性ないし持続的な減少が、皮膚炎に与える影響を調べることである。本研究は、種々の自己免疫疾患の病態解明につながると考える。 【研究実績】アトピー性皮膚炎のモデルとして、接触過敏反応(CHS)モデルを用いて、Tregの関与を検討した。その結果、惹起相でのTregの減少は、CHSを亢進させた。また、IgE依存性慢性アレルギー炎症モデルにおいて、同様にTregを減少させると炎症が増強した。したがってIgE依存性慢性アレルギー炎症においても、Tregが炎症の度合いを抑制することがわかった。一方、円形脱毛症を自然発症するC3H/HeJマウスにS4B6を投与したが、発症頻度が低く有意な結果は得られなかった。また、円形脱毛症をすでに発症したC3H/HeJマウスを十分数得られなかったため、一旦発症した円形脱毛症におけるTregの影響は明らかにできなかった。 【今後の研究課題】実験に必要な、アトピー性皮膚炎自然発症モデルであるFlaky tail(Flgft/ft)の匹数を確保できなかったため、アトピー性皮膚炎モデルにおけるTregの一過性減少の影響を検討することを達成できなかった。今後、マウスの匹数が確保できた段階で、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いてTregの役割を検討する予定である。また、円形脱毛症モデルについては、今後、実験系の改良を検討したい。
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