研究実績の概要 |
我々は、バリア障害が乾癬病態の最も上流に位置するという新しい視点から、バリア障害に引き続く表皮シグナルと免疫系クロストークについて、乾癬モデルマウス(K5.Stat3C マウス)を用いて検討することを試みている。昨年度は乾癬病態の成立において表皮内樹状細胞であるランゲルハンス細胞が重要な役割を果たすことを示した。本年度は、Stat3が活性化した表皮細胞がランゲルハンス細胞を活性化するシグナルについて検討した。これまでにランゲルハンス細胞を活性化する分子として、TNF-a, IL-1a, IL-1b, IL-6, TGF-b, IL-18, TSLPが報告されている。新生児K5.Stat3Cマウスの表皮細胞を培養し、これらの分子の発現を正常マウスの表皮細胞と比較してみると、IL-1aが高発現しており、表皮細胞から産生されるIL-1aがランゲルハンス細胞を活性化する可能性を実証した。次に、表皮細胞とランゲルハンス細胞のクロストークとして細胞膜小胞体であるExosomeが働いている可能性を考え、実験を施行した。まず、正常マウス、K5.Stat3Cマウスの培養表皮細胞から超遠心法を用いてExosomeを採取した。採取したExosomeは、 Westernblott法でCD9, CD63が陽性であることを確認した。次に、K5.Stat3Cマウスの表皮からsortingして、ランゲルハンス細胞を採取しExosomeと反応させ、タイムラプスを用いてランゲルハンス細胞がExosomeを取り込むか否かを観察した。72時間観察したが、ランゲルハンス細胞はExosomeを取り込まなかった。この結果から、乾癬の表皮におけるランゲルハンス細胞を活性化に、表皮細胞が産生するExosomeは関与しないことが明らかになった。
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