研究課題/領域番号 |
15K09770
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内 博史 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50437787)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / フィラグリン / 経表皮水分蒸散量 |
研究実績の概要 |
近年、アトピー性皮膚炎患者の表皮において、ケラチンパターンを形成しバリア機能を維持するのに必須であるフィラグリンの発現が低下していることが明らかにされた。FLGの産生低下により、角層のバリア機能・水分保持能が低下し、外来性抗原が容易に皮膚に侵入できることが、アトピー性皮膚炎の病態形成に大きく関与していると考えられている。2015年度の研究では、ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTを用いて、トリプトファンの紫外線代謝物である6-formylindolo[3,2-b]carbazole (FICZ)がフィラグリンの発現を増強することを明らかにした。またFICZはアリル炭化水素受容体(AhR)のリガンドであることから、AhRのsiAHRを作成し、HaCaT細胞にtransfectしたところ、FICZのフィラグリン産生増強作用を阻害できた。すなわち、FICZはAhRを介してフィラグリンの発現を制御していることが明らかになった。さらにNc/Ngaマウスにダニ抗原を反復塗布することで作成したアトピー性皮膚炎モデルに、FICZ含有軟膏を外用することで経表皮水分蒸散量が抑制されることを見出した。今後、さらにアトピー性皮膚炎の病態に及ぼすFICZの効果について検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、初年度においてケラチノサイトにおけるFICZによるフィラグリン産生増強作用がAhRを介していることをsiRNAを用いて証明でき、またアトピー性皮膚炎モデルにおいて、FICZ含有軟膏は経表皮水分蒸散量を抑制する作用を持つことを明らかにすることができたことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Nc/Ngaマウスによるアトピー性皮膚炎モデルを用いて、FICZ含有軟膏、溶媒のみを含有するコントロール軟膏、及び陽性コントロールとして吉草酸ベタメタゾン軟膏による、臨床症状の推移を紅斑、浮腫、びらん、鱗屑について、評価する。一方、外用開始時、4週間後、8週間後に病変皮膚を採取し、トリプシン処理により表皮のみを採取しFLG産生量をウエスタンブロッティングにて評価する。さらに経時的に採血を行い、アトピー性皮膚炎の重症度と正の相関を示すことが知られている血清CCL17を測定する。皮膚の病理学的検討も行う。経時的に病変皮膚をトレパンを用いて採取し、湿疹の指標である表皮肥厚、海綿状態、炎症細胞浸潤についてHematoxylin-Eosin染色および免疫染色によって評価する。以上により、FICZの臨床応用への展開を視野に入れた研究を行っている予定である。
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