研究課題
アトピー性皮膚炎は強いそう痒を伴う湿疹病変を特徴とする難治性のアレルギー疾患である。根本的な治療法は存在せず、現在の治療の中心はステロイド軟膏外用による対症療法のみである。アトピー性皮膚炎の表皮では、フィラグリン(FLG)の産生低下により角層のバリア機能が低下しているため、外来性抗原が容易に侵入し湿疹病変の発症を繰り返す。本研究ではトリプトファン代謝物である6-formylindolo[3,2-b]carbazole (FICZ)が、培養表皮ケラチノサイトにおいて、アリル炭化水素受容体を介してフィラグリン産生を促進することを明らかにした。次にNc/Ngaマウスにダニ抗原を反復塗布することアトピー性皮膚炎モデルを作成した。このマウスの皮膚では湿疹病変の形成に伴い、表皮のフィラグリン量の低下、経皮的水分蒸散量(TEWL)の上昇が認められるが、FICZを局所投与することでフィラグリン量、TEWLとも正常化し、湿疹病変も臨床的、病理学的に改善することを明らかにした。FICZは紫外線により生体内で生成されるトリプトファン代謝産物であるが、これまで皮膚における機能は不明であった。今回の結果から、FICZが皮膚の炎症反応を抑制し、恒常性を維持する役割を果たしていること、アトピー性皮膚炎に対する新しい治療選択肢の1つとなることが明らかになった。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of Dermatological Science
巻: in press ページ: in press
Cell Death & Disease
巻: 8 ページ: e2931