研究課題
平成27年度は、TSIXが強皮症患者の病変部皮膚で他の疾患や正常皮膚よりも発現が増加しており、さらにその局在は皮膚線維細胞であることを突き止めることができた。また、TSIX siRNAによりcollagen mRNAのstabilityが有意に減少した。つまり、TSIXそのものは皮膚線維芽細胞においてcollagen mRNAのstabilityを維持することでコラーゲン発現をコントロールするが、強皮症皮膚線維芽細胞ではTSIXが増加することでコラーゲン発現が恒常的に増加し、ひいては組織の線維化が誘導されると考えられた。つまり本研究によりTSIXは本症の病態に強く関わる因子であるとともに、新しい治療のターゲットになり得ることが明らかとなった。そして平成28年度は、TSIXの血清中濃度の疾患マーカーとしての有用性を評価するため、少数の血清サンプルからRNAを抽出し、TSIXが実際に血清中にも発現していることをreal-time PCRで確認することができた。また、多数の強皮症患者群で血清TSIX濃度を測定したところ、正常対照群に比較して強皮症患者群で有意に増加していたため診断に有用である可能性が示唆された。さらに患者群において臨床症状との相関を調べたところ、スキンスコアとの相関を認め、病勢マーカーとしての有用性も示唆された。以上の結果をExp Dermatol雑誌に投稿し掲載された(Wang Z et al. Exp Dermatol 2016)。また、派生する研究として、悪性黒色腫患者の血清中snoRNA host gene 5濃度が全く新しい腫瘍マーカーになる可能性についても論文発表している(Ichigozaki Y, et al. Exp Dermatol 2016)。
1: 当初の計画以上に進展している
すでに平成27-28年度の研究計画については完了し、平成29年度以降に計画していたマウスモデルを用いた研究に進んでいるため
本年度はin vivoでのTSIXをターゲットとした治療の効果を調べるため、皮膚線維化モデルマウスにおいてTSIXを強発現あるいは阻害して、生じる変化を観察することで治療応用の可能性を明らかにする。例えば過去のmicroRNAの投与実験に準じて(Makino K, et al. J Immunol 2013)、TSIX siRNAを週に一度腹腔内注射して、ブレオマイシン28日間連続局注による皮膚の線維化を抑制出来るかを評価する。加えて他の各疾患においても、増加しているlncRNAについてはsiRNAで抑制し、減少しているlncRNAについてはlncRNAを補充して治療薬としての有用性を検討する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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