マウスの表皮内に常在するγδT細胞は単一のγδT細胞レセプター(Vγ3TCR)を発現し、表皮ケラチノサイト上の自己リガンドを認識する。マウス表皮内γδT細胞は胎仔胸腺内で分化し出生前に皮膚に遊走するが、胎仔胸腺内のVγ3TCR陽性前駆細胞はIFN-γ産生細胞のマーカーであるCD27を発現し、TCR刺激によりIFN-γを産生する。一方、成熟マウスの表皮内γδT細胞はCD27陰性でTCR刺激により大量のIL-13を産生するが、IFN-γは産生しない。 CD27陽性IFN-γ産生Vγ3TCR陽性前駆細胞がCD27陰性IL-13産生細胞へ分化する場と時期を明らかにするために、胎仔胸腺細胞、胎仔末梢血リンパ球、胎仔真皮細胞、胎仔表皮細胞、新生仔表皮細胞、成熟マウス表皮細胞を単離し、Vγ3TCR陽性細胞におけるCD27の発現とサイトカイン産生能を解析した。その結果、Vγ3TCR陽性前駆細胞上のCD27は胎仔真皮に遊走した直後に陰性化するが、CD27陰性Vγ3TCR陽性細胞は出生前後の表皮内でIL-13産生能を獲得することが明らかになった。 また、γδT細胞を欠損するTCRδ鎖遺伝子欠損マウスの表皮内T細胞はαβT細胞によって置換されるが、TCRδ鎖遺伝子欠損マウスの表皮内αβT細胞はIL-13ではなくIFN-γを産生することを発見した。TCRδ鎖遺伝子欠損マウスの表皮内αβT細胞はTCRを介して表皮ケラチノサイト上の自己リガンドを認識できないことが示されており、出生前後の表皮内においてTCRシグナルが表皮内T細胞のIL-13産生細胞への分化を誘導する可能性が示唆された。実際に正常マウスの胎仔表皮内γδT細胞を抗TCR抗体とIL-15の存在下で培養することにより、IL-13産生細胞へ分化誘導できることを確認した。
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