研究課題/領域番号 |
15K09775
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
武居 公子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90325861)
|
研究分担者 |
上里 博 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10137721) [辞退]
丸山 一郎 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 教授 (70426568)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 創傷治癒 / Rap2 |
研究実績の概要 |
低分子量Gタンパク質Rap2は、癌遺伝子rasの産物であるRasの類縁分子であり、3つのサブタイプを持つ(Rap2A, Rap2B, Rap2C)。マウスケラチノサイトモデル細胞株であるPam212細胞では、Rap2Bが主要なサブタイプとして発現しており、その発現はこのケラチノサイトの細胞間接着部位に集積していた。また、Rap2Bの発現を欠くPam212由来娘細胞株(LY, LU)では親株と比較して細胞間接着が緩く疎なコロニーを形成する。RNAiによりRap2BをノックダウンしたPam212細胞では、細胞の集団遊走が促進した。このことからRap2はケラチノサイトの細胞間接着や創傷治癒を制御している可能性があると考えた。Western解析では、マウス表皮で発現しているRap2の主要サブタイプはRap2Bであることが確認された。そこで、Rap2Bノックアウト(KO)マウスを用いて皮膚創傷治癒解析を行った。オスKOマウス5匹、オス野生型同胞を対象として背部に作製した創傷の治癒速度を観察したが、両者に有意差はみられなかった。その理由として、Rap2B以外のサブタイプであるRap2A, Rap2Cが喪失したRap2Bの機能を補完している可能性があるので、創傷部位におけるRap2A, Rap2Cの発現を確認したいと考えている。Rap2A, Rap2CのKOマウスは既に作成済みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス表皮における主要なRap2のサブタイプがRap2Bであることより、Rap2は表皮においてモデル細胞株と同様の機能を有することが推測された。また、Rap2A, Rap2CのKOマウスも作製しており、予定通りの解析が可能であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
創傷治癒速度に有意差が出ない理由として、個体差による結果のばらつきがあるので、Rap2B KOマウスの解析数を増やして更に検討したい。創傷治癒過程におけるケラチノサイトの変化をみるために、創傷治癒経過に応じた病理組織を観察し、表皮伸張の差異を検討する。また、Rap2B KOマウス表皮の創傷治癒過程において発現が増加しRap2Bの機能を補完しているサブタイプを特定し、必要があればダブルKO、トリプルKOを作製して検討したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Western解析の結果、マウス表皮におけるRap2の主要サブタイプがRap2Bであることが明らかになったため、オスRap2B KOマウスとオス野生型同胞で創傷治癒速度を計測したが、有意差が見られなかった。その理由として、Rap2B以外のサブタイプであるRap2A, Rap2Cが喪失したRap2Bの機能を補完している可能性を考えた。以上の理由のため、Rap2A, Rap2C KOマウスの戻し交配をRap2B KOマウス増産(創傷からの検体採取や新生仔からのケラチノサイト初代培養実験)より優先したため、当初予定よりもマウス飼育数が減少し、次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
Rap2A KOマウス、Rap2C KOマウスを用いてRap2B KOマウスと同様の実験を行う。また、Rap2A, BのダブルKOマウスやRap2A, B, CのトリプルKOマウスを作成し、表皮に発現しているRap2を完全喪失させた個体を作成し、これらの KOマウスを用いて創傷治癒解析や創傷部位からの検体採取を行う。
|