研究実績の概要 |
皮膚創傷治癒におけるRap2の関与を調べる為に、Rap2A, B, Cの各knockout (KO) マウスを作製し、戻し交配9世代まで完成した。Western解析を行った結果、マウス表皮におけるRap2の主要なサブタイプはRap2BとRap2Cであった。前年度までの解析で、Rap2B KOマウスの創傷治癒解析では、KOマウスと野生型同胞との間に創傷治癒過程および速度の有意差はみられず、共に表皮に発現しているRap2Cが喪失したRap2Bの機能を代償しているためではないかと考えた。このため、8~12週齢のオスRap2C KOマウス6匹と同胞野生型7匹の背部を剃毛し、4mmパンチにより創傷を作成した。当日を0日とし、連日創面積を計測した結果、3日目のみKO マウスで創縮小が有意に遅延した。しかし、他の観察日には創傷治癒に有意差は認められず、創傷治癒速度に差は検出されなかった。創傷は受傷直後から数時間が「出血凝固期」、受傷数時間から数日が「炎症期」、受傷数日以降に「増殖期」、「成熟期」を経て治癒するとされる。従ってRap2Cは炎症期から増殖期にかけて機能する可能性があるが、表皮にはRap2Bも発現しており、喪失したRap2Cの機能を代償していると思われる。このため、Rap2BおよびRap2Cの両方を欠失させたRap2BCダブルKOマウス解析を試みた。しかし、作製したメスRap2BCダブルへテロマウスは妊娠せず、オスRap2BCダブルへテロマウスには成長遅延がみられ、Rap2BCダブルKOマウスでの解析は行えなかった。現在、表皮特異的なRap2BCダブルKOマウスの作出を試みている。
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