研究課題
本研究は、明暗サイクルの攪乱による「概日リズムの乱れ」がアトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の発症と難治化におよぼす影響とその分子機構を究明するとともに、アレルギー疾患の新たな発症予防法や治療法の開発に貢献することが目的である。マウスを用いた検討により、明暗サイクルを乱したマウスでは接触過敏反応が増強することや、生後に生理的な明暗環境を乱した仔マウスでは、ハプテンに対する新生児免疫寛容が誘導されず炎症反応が増強すること、明暗サイクルを撹乱した妊娠母マウスから出生した仔マウスでも同様の現象がみられることなど、発生段階も含めた概日リズムの乱れがアレルゲンに対する感作や過敏反応の制御機構に影響をおよぼすことを示唆する知見を得た。この観察結果を発展させ、概日リズムの乱れがアレルギー反応や経皮感作、アレルゲンに対する耐性の獲得、表皮バリア機能、搔き行動などにおよぼす影響を広くしかも詳細に解析することにより、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の発症や難治化の機構の解明や治療、予防法の開発に貢献したい。
2: おおむね順調に進展している
概日リズムの乱れが接触過敏反応やアトピー性皮膚炎モデルマウスでのアレルギー炎症におよぼす影響の検討は、順調に進行しており、国際学術雑誌への投稿が可能な程度にデータが蓄積している。結果を要約すると、マウスを用いた検討により、明暗サイクルを乱したマウスでは接触過敏反応が増強することや、生後に生理的な明暗環境を乱した仔マウスでは、ハプテンに対する新生児免疫寛容が誘導されず炎症反応が増強すること、明暗サイクルを撹乱した妊娠母マウスから出生した仔マウスでも同様の現象がみられることなど、発生段階も含めた概日リズムの乱れがアレルゲンに対する感作や過敏反応の制御機構に影響をおよぼすことを示唆する知見が得られた。また、その現象に関する詳細な機序の検討も進展している。さらに、概日リズムの乱れがアレルゲンに対する耐性の獲得におよぼす影響の検討に関する研究や慢性時差モデルにおける同様の検討も順調に進展しており、今後の発展が期待できる。
今後は、概日リズムの乱れがアレルゲンに対する耐性の獲得におよぼす影響の検討に関する研究や慢性時差モデルにおける同様の検討を精力的に行う予定である。具体的には、概日リズムの乱れがアレルゲンに対する感作や炎症の惹起におよぼす影響を検討するため、マウスの明暗サイクルを変化させた条件でハプテンに対する接触過敏反応やハプテン繰り返し塗布によるアトピー性皮膚炎モデルを用いて、皮膚炎局所に浸潤するT 細胞や自然リンパ球のサブセットと機能の解析、リンパ節や皮膚炎局所での制御性T細胞の解析、抗原提示細胞の機能の解析、B 細胞のクラススイッチや血清IgE の推移の解析、概日リズムの調節に関係するコルチコステロンや成長ホルモンなどの液性因子の影響の解析などを行う。次に、概日リズムの乱れが経皮感作による全身性即時型アレルギー反応におよぼす影響を検討するため、卵白アルブミンで経皮感作を行う即時型アレルギーのマウスモデルを用いて、アレルゲンの経口チャレンジ後のアナフィラキシー反応や経気道チャレンジ後の喘息反応の解析、局所のT 細胞や自然リンパ球のサブセットと機能の解析、肥満細胞や抗原提示細胞の機能の解析、血清IgE の推移の解析、コルチコステロンや成長ホルモンなどの液性因子の影響の解析などを行う。また、概日リズムの乱れがアレルゲンに対する耐性の獲得におよぼす影響を検討するため、明暗サイクルの乱れがアレルゲンに対する耐性獲得におよぼす影響を詳細に検討するため、ハプテンに対する接触過敏反応の耐性を実験的にマウスに誘導できるlow-zone tolerance誘導の系を用いて、種々の明暗環境で耐性の獲得能を検討する。
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