研究課題
インターフェロン制御因子(IRF)7、8は、全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患感受性遺伝子であることが知られているが、SLEの病態における役割についてはよく分かっていない。野生型マウスにプリスタンを投与すると、自己抗体の産生、糸球体腎炎等、ヒトのSLEに類似した症状を誘発することができる。我々はまずSLEにおけるIRF7の役割を検討するために、IRF7ノックアウト(KO)マウスにプリスタンを投与した。IRF7KOマウスは、野生型マウスと同程度に糸球体腎炎を発症したが、自己抗体の産生は認められず、糸球体腎炎の発症と自己抗体の産生の間に解離がみられた。我々は、自己抗体の産生にはIRF7/I型IFN経路が、糸球体腎炎等の臓器障害にはNF-kB経路が重要な役割を果たしていることを証明し、昨年論文に報告した。また昨年度よりIRF8KOマウスにも同様の実験を行っている。予備実験では、IRF8KOマウスにプリスタンを投与すると、野生型マウスよりも糸球体腎炎の程度が軽減するという結果が得られている。野生型マウス、IRF7KOマウスではプリスタン投与により腎障害が生じてくることより、これらのマウスにおいて腎障害を含めた臓器障害の原因となりうる細胞の同定を試みている。予備実験では、野生型マウス、IRF7KOマウスにおいてはプリスタン投与により炎症性単球が浸潤してくるが、IRF8KOマウスでは浸潤がみられないことよりIRF8KOマウスの腎障害に炎症性単球が関与している可能性があり、現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
IRF7KOマウスを用いた実験計画は完成し、昨年国際誌に論文を発表した。IRF8KOマウスを用いた実験計画については、現在実験を進めている最中である。
まずプリスタン投与後のIRF8KOマウスの臨床症状を詳細に検討する。野生型マウスとIRF8KOマウスに、PBS(陰性コントロール)あるいはプリスタンを腹腔内投与し、約10ヶ月後に尿検査、静脈採血、腎臓の採取を行う。尿蛋白の量は採取した尿を用いて尿試験紙により定量し、腎障害の有無を両系統のマウスで比較する。静脈血から血清を遠心分離し、血清中の抗核抗体の有無はHep-2細胞を用いた蛍光抗体間接法で確認する。さらにELISA法を用いて、抗核抗体および抗dsDNA、ssDNA、RNP、Sm抗体の測定を行う。次に炎症性単球が臓器障害に果たす役割について検討する。野生型マウスにプリスタンを投与すると、2週間後に腹腔内に炎症性単球が浸潤してくることが分かっている。浸潤してきた炎症性単球をsortingし、IRF8KOマウスに投与することで腎障害が誘発されるかを検討する。また炎症性単球がNF-kB経路のtarget geneであるTNF-α、IL-6等の炎症性サイトカインを産生するかを、IRF8KOマウスに移入後に血清を採取しELISA法で測定、あるいはsortingした炎症性単球の細胞内染色をすることで確認する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)
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