研究課題/領域番号 |
15K09780
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
金澤 伸雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90343227)
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研究分担者 |
稲葉 豊 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00647571)
国本 佳代 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10438278)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 蛋白質 / 免疫学 |
研究実績の概要 |
まず、新規PSMB9遺伝子変異が見出された沖縄の幼児例について、患者由来不死化B細胞から細胞蛋白質を抽出し抗ユビキチン抗体でウェスタンブロットを行い、遺伝子型が野生型の患者の母親由来細胞や、中條-西村症候群(NNS)患者由来細胞と比較したが、PSMB9変異患者細胞ではNNS患者細胞ほど明らかなユビキチンの蓄積は見られなかった。また、皮疹の病理標本の薄切切片を抗ユビキチン抗体にて免疫染色してNNS患者皮疹と比較したところ、PSMB9変異患者組織でも浸潤細胞の細胞質や核にユビキチンの蓄積を認めるものの、NNS患者組織ほど広く強い蓄積は見られなかった。一方、患者由来不死化B細胞内蛋白質をシュクロース濃度勾配にて分画したものを用い、プロテアソーム各酵素活性を測定するとともに各サブユニットの抗体にてウェスタンブロットを行ったところ、すべての分画に共通した明らかな機能低下は見られなかったが、NNS患者由来細胞と同様に未成熟な複合体の残存を認め、プロテアソーム複合体形成不全の存在が示唆された。 また、臨床的にNNSと診断されながらPSMB8変異のない症例の発掘と遺伝子解析を進めた。以前から知られていた横浜の成人例について、患者と両親の末梢血を用いたプロテアソーム酵素活性の測定を行ったが、明らかな酵素活性の低下は認めず、さらに、プロテアソーム関連遺伝子パネルおよびエキソーム解析を行ったが、有意な疾患関連変異を見出すことはできなかった。次いで、厚労科研難治性疾患政策研究事業で行った全国疫学調査にて見出した大分の小児例について、現在遺伝子解析を進めている。 さらに、PSMB8ホモ変異をもつNNS患者4例についてプロテアソーム関連遺伝子をパネルで網羅的に検討することにより、一部の症例に報告のない変異を見出し、重症度など臨床病型の違いとの関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の計画に沿って、<NNS臨床診断例におけるパネルあるいはエキソーム解析による新たなプロテアソーム関連遺伝子変異の同定>と<NNS臨床診断例におけるプロテアソーム酵素活性の測定>を継続し、新たに<NNS臨床診断例におけるユビキチン蓄積の検討>、さらに<NNS患者におけるパネル解析によるプロテアソーム関連遺伝子変異の検索>を行い、<NNS臨床診断例における血中サイトカインの網羅的解析>を除き、本年度の研究計画を概ね遂行した。具体的には、NNS疑いとして当科を紹介受診したがPSMB8変異を認めない1症例について、末梢血を用いたプロテアソーム酵素活性の測定と次世代シーケンサーを用いたプロテアソーム関連遺伝子パネル解析と全エキソーム解析を行ったが、有意な活性異常や遺伝子変異を見出すことはできなかった。引き続き現在は、全国疫学調査で見いだされた新たな症例について遺伝子検索中である。一方、PSMB9の新生新規ヘテロ変異とPSMD9の稀な一塩基多型を見出した1症例について、さらにプロテアソームの機能や構造を検討した結果、明らかなユビキチン蓄積を伴わず、プロテアソーム酵素活性の低下も軽度だが、NNS患者と同様の複合体形成異常を認めた。プロテアソーム酵素活性低下とユビキチン蓄積を特徴とするNNSとは異なるメカニズムによるプロテアソーム関連自己炎症疾患である可能性が高く、今後もその発症メカニズムを追究する必要がある。さらに、PSMB8ホモ変異が明らかなNNS患者4例についてプロテアソーム関連遺伝子パネル解析を行い、一部の症例に新しい変異の併存を見出したことから、重症度など症例ごとの臨床病型の違いとの関連が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度から継続している<NNS臨床診断例におけるパネルあるいはエキソーム解析による新たなプロテアソーム関連遺伝子変異の同定>を継続し、まだできていない<NNS臨床診断例における血中サイトカインの網羅的解析>をはじめとしてNNS臨床診断例におけるプロテアソーム機能異常、シグナル伝達以上の全貌解明を目指す。同時に、交付申請時の計画に沿って、<広義のNNSにおけるプロテアソーム機能是正の試み>として、パネルあるいはエキソーム解析によってプロテアソーム関連遺伝子変異が認められた検体に見られるプロテアソーム機能不全そのものを対象に、細胞レベルでの是正法を検討する。すなわち、患者由来不死化B細胞を用いて①正常プロテアソーム複合体補充、②変異サブユニット発現阻害、③正常サブユニット遺伝子導入を試み、プロテアソーム酵素活性の測定、ウェスタンブロットなどで見られたプロテアソーム機能不全を反映した表現型の是正が可能か、検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数を使いきらず繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
約1万円ほど消耗品に追加となるが、使用予定の大枠に変更はない。
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